「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの二作目
2016年刊行作品。前年に刊行された『アンデッドガール・マーダーファルス1』の続篇となる。青崎有吾(あおさきゆうご)による「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの第二作だ。
表紙イラストは今回も大暮維人(おおぐれいと)が担当。描かれているのは馳井静句(はせいしずく)。スペンサー銃と日本刀が合体した、彼女のオリジナル武器「絶景(たちかげ)」のビジュアルが判るのもありがたい。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
シャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンが好き!その後のモリアーティ教授が気になる方。切り裂きジャックや吸血鬼カーミラ、オペラ座の怪人などなど、魅力的な著名キャラクターがクロスオーバーするタイプの作品がお好きな方におススメ。
あらすじ
教授たちの足跡を求めて、ロンドンへとやってきた“鳥籠使い”の三人。この地では、怪盗ルパンによる犯行予告が世間を街を賑わせていた。資産家フォッグ氏の黒ダイヤ「最後から二番目の夜」を盗み出す。警備にあたるのは、イギリスが誇る名探偵シャーロック・ホームズ。事件の背後では教授一味も暗躍し、事態は混迷の度合いを深めていく。
ここからネタバレ
以下、各章ごとにコメント
登場人物まとめ
『アンデッドガール・マーダーファルス2』の舞台は1899年のイギリス、ロンドン。
前巻『アンデッドガール・マーダーファルス1』は、一章と二章が別のお話だった。しかし、『アンデッドガール・マーダーファルス2』は三章と四章に分かれてはいるものの、お話的にはひとつながりのエピソードとなっている。三章はどちらかというと謎解き重視の推理パート。第四章は戦闘メインのバトルパートとなっている。
では、簡単に登場キャラクターをザックリとまとめておこう。
- 輪堂鴉夜(りんどうあや):怪物専門の探偵。不死の存在にして絶世の美女。首から下を教授らに奪われている。千年近い寿命を誇るが、肉体的な年齢は14歳。後天的な不死者。
- 真打津軽(しんうちつがる):鬼殺し。怪異を殺す力を持つ。半人半鬼の存在。かつては教授による実験体のひとりだった
- 馳井静句(はせいしずく):鴉夜に絶対の忠誠を誓うメイド。高い戦闘力を誇る
- シャーロック・ホームズ:名探偵。肉体的な戦闘スキルも高い
- ジョン・H・ワトソン:ホームズの助手。
- アルセーヌ・ルパン:怪盗。高い戦闘力を誇る
- ファントム:オペラ座の怪人。ルパンの配下となる
- レイノルド・スティングハート:保険機構ロイズの第5エージェント
- ファティマ・ダブルダーツ:保険機構ロイズの第7エージェント
- ジェームズ・モリアーティ:犯罪結社《夜宴(バンケット)》の首魁
- 切り裂きジャック:《夜宴》メンバー。半人半鬼の力を持つ殺人鬼
- カーミラ:《夜宴》メンバー。吸血鬼
- アレイスター・クロウリー:《夜宴》メンバー。魔術と数秘術の研究家
- ヴィクター:《夜宴》メンバー。人造人間
- アニー・ケルベル:パリの新聞社の記者
- フィリアス・フォッグ:八十日間世界一周を達成した男。資産家
第三章 怪盗と探偵
資産家フォッグの持つ黒ダイヤ「最後から二番目の夜」を巡って、ルパンVSホームズの大争奪戦が展開される。これに“鳥籠使い”の三人と、保険機構ロイズの二人。更には、教授たち《夜宴》のメンバーも加わって、なんと五つ巴のバトルが展開される。こんな込み入った話、よく書く気になったな。
第三章は推理パート。ルパン、ホームズ、そしてロイズ陣営のキャラクター紹介。そして、厳重な警戒下にある「最後から二番目の夜」を、ルパンがいかにして奪うことに成功したのか。火花散る、ルパンとホームズの頭脳戦が楽しい。前巻に比べるとアクションシーンが多めで、展開も飽きさせない工夫が凝らされていて、俄然面白くなってきている。章のラストでは、満を持して教授たち《夜宴》メンバーがそろって登場。彼らの出現シーンも格好いいね!
第四章 夜宴
主要キャラクターが出そろったところで、最終パートでは、五陣営が物理的に激突するバトルパートに突入する。津軽VSルパンVSレイノルド。ファティマVSファントム。ホームズVSアレイスター。邸内各所で戦闘が進行する中で、いちばん見ごたえがあったのは、やはり静句VSカーミラの女の闘いかな?サービスシーンも盛り込まれて、読む側を飽きさせない構成の妙味。
そして敵側の最強キャラ、切り裂きジャックの強キャラ感がイイ!ジャックは津軽と同様に、半人半鬼のキャラクターなんだけど、スペック的には上位互換っぽい。戦闘力では自分を上回るジャックを相手に、津軽がいかに立ちまわるのか。基本スペックで負けている分を知恵(騙しともいうが)で補う。「ジョジョ」に例えるなら、ジョセフ・ジョースター的な感じ?
本作のメインヒロイン、輪堂鴉夜は、首から下が無いので自分で動くことが出来ないし、当然戦うことも出来ない。制約だらけのキャラクターながらも、時には迷子?になってみたり、金庫の中に入ってトラップ的に機能したりと、使いどころがしっかり考えられているところも面白い。教授一味とのやりとりは、どうしてもバトル要素が増えてくるだろうから、この先、鴉夜をどう使っていくかが気になるところではある。
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