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『探偵大戦』似鳥鶏 特殊能力を持つ探偵たちの競演

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似鳥鶏の最新作は異能探偵バトル

2021年刊行作品。2007年『理由あって冬に出る』でのデビュー以来、市立高校シリーズ、戦力外捜査官シリーズ他、多数の作品をリリースし続けている似鳥鶏(にたどりけい)の最新作である。

推理大戦

似鳥鶏の通算作品数は、現時点で30作を超えており、デビュー以来、年に二冊は新刊を上梓している計算になる。この刊行ペースはすごいな。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

能力バトル、異能系の作品が好きな方。特殊設定系のミステリが好き!という方。個性豊かな探偵たちがたくさん登場する作品を読んでみたい方。似鳥鶏作品を読んでみたいけど、どれから読んでいいか悩んでいる方におススメ!

あらすじ

日本で発見された歴史的な聖遺物。所有者は聖遺物を譲る条件として、一つの推理ゲームを提案した。かくして世界中から集められた探偵たちがゲームの謎に挑む。アメリカ、ウクライナ、日本、ブラジル。各国から集った探偵たちは、それぞれ特殊な能力を有していた。異能探偵たちの競演。果たして真相をつきとめる真の「名探偵」は誰なのか。

ここからネタバレ

スーパー探偵大戦だ!

本作では特殊能力を持つ探偵五人が登場する。まずは登場人物の一覧を書いておこう。

  • シャーロット・パウラ・ティンバーレイク:「AI」探偵ユダの助手。アメリカ人。無敵のAIにより超高速の演算能力を持つ
  • ボグダン・ユーリエヴィチ・コルニエンコ:クロックアップ探偵。ウクライナ人。脳を高速稼働させることで、超絶的な速度での思考が可能
  • 高崎満里愛(まりあ):五感探偵。日本人。超人的な五感を持ち、無制限の現場検証能力を持つ
  • マテウス・リベイロ:霊視探偵。ブラジル人。カルト教団の後継者。相手の嘘を100%見抜くことが出来る
  • シスター・リン(胡笙鈴):強奪探偵。中国人。強制服従音声を操る。他者から無制限に情報を集めることが出来る
  • 弘瀬大和(やまと):主人公のいとこ
  • 弘瀬廻(めぐる):僕。主人公

『探偵大戦』では、これら超人的な特殊能力を持った探偵たちが推理合戦を繰り広げる。特殊設定ミステリのひとつと言ってよいだろう。

ちなみに表紙ビジュアルと、キャラクター名を対照させてみた。大和くんと僕は自信がないので逆かもしれない。目つきの悪い方を僕にしてみた(笑)。

探偵大戦キャラクター一覧

本作は前半パートで、各探偵たちの登場エピソード。後半は探偵たちがそろって、「聖遺物争奪」ゲームに挑戦する構成となっている。

なお、「聖遺物」については、Wikipediaから引用させていただくとこんな意味。仏教における「仏舎利(入滅した釈迦の遺骨)」のようなものだろうか?

聖遺物(せいいぶつ、羅: Reliquiae)は、キリスト教の教派、カトリック教会において、イエス・キリストや聖母マリアの遺品、キリストの受難にかかわるもの、また諸聖人の遺骸や遺品をいう。これらの品物は大切に保管され、日々の祭儀で用いられてきた。聖遺物のうち聖人の遺骸については、正教会での不朽体に相当する。古代から中世において、盛んに崇敬の対象となった。

聖遺物 - Wikipediaより

以下、各パートごとに雑感。

アメリカ合衆国 ロサンゼルス郊外

シャーロット・パウラ・ティンバーレイク登場エピソード。彼女自身は探偵ではなくあくまでも助手。探偵はAI探偵のユダの方であるという設定が面白い。シャーロットは過去に凄惨な犯罪事件に巻き込まれた過去があり、世界中の犯罪を撲滅することを悲願としている。

ウクライナ キエフ中心部

ボグダン・ユーリエヴィチ・コルニエンコ登場エピソード。「吹雪」と呼ばれる思考のクロックアップの能力によって、ボグダンは猛烈な速度で考えることが出来る。スーパーコンピュータを内蔵しているようなものである。

もっともクロックアップの代償として、能力使用後の消耗が激しかったり、睡眠障害を抱えていたりと、健康状態的には不憫な人物。個人的にはボグダンがいちばん好き。

日本国 東京都千代田区

高崎満里愛登場エピソード。視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚の五感すべてにおいて超人的な能力を持つ。鑑識いらず。科学調査不要。一人で現場検証が可能な人物。不要な時は能力の遮断も出来るようなので、その点は便利。警察犬(いちおう)のハチロー号がパートナー。関西弁を操るが、出身は北海道東根室。

ブラジル連邦共和国 サンパウロ・ピニェイロス地区

マテウス・リベイロ登場エピソード。ブラジルのカルト教団の後継者。高度なコールドリーディング能力を持つが、それとは別に特殊能力として相手の嘘を完璧に見抜く力を持っている。「あなたは犯人ですか?」と声をかけ、そのリアクションを見るだけで犯人が分かってしまうのだから、犯人と会話することさえできれば最強の探偵スキルと言える。

決戦 北海道上川郡筆尻村

聖遺物争奪戦の決戦編である。

なお、個別のエピソードが存在しなかった、シスター・リンこと胡笙鈴は、中国人だが、ヴァチカン側のエージェントとして登場する。彼女には、強制的に他者を服従させる「声」を持っている。つまり相手に命じるだけでいくらでも情報を入手することが出来るわけだ。彼女の個別エピソードがなかったのは、この特殊能力が作品構成上、重要なポイントとなっていたからであろう。

北海道編では一件の殺人事件が発生する。意味ありげな手掛かりが多数残された現場で、五人の探偵のたちの異能力が激突する。各人それぞれの能力を発揮した推理が展開されるが、いずれも決定力を欠き、真相に迫れない。

この作品の面白いところは、終盤に至って、第六の能力者を登場させている点にある。これまで競っていた五人の探偵たちが最後には共闘する展開は、お約束ながらもワクワクさせられた。

推理大戦

推理大戦

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