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『ネリマ大好き』新井素子 練馬生まれ、練馬育ち、練馬在住民による練馬大好きエッセイ

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濃厚な練馬愛に包まれる至福?の一冊

1992年刊行作品。作者の新井素子は練馬生まれの練馬育ち。高校は練馬区上石神井にある井草高校で、大学は立教。西武池袋線文化圏にどっぷり浸かって生きてきたような人間で、とにかく地元大好き。濃厚なネリマ愛が全編に漂うエッセイ集ですな。作者は1960年生まれだったはずなので、32歳くらいの時の作品かな。

ネリマ大好き

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

新井素子の初期作品、特にエッセイを読んでみたい方。『扉を開けて』『あたしの中の』『いつか猫になる日まで』を愛読されていた方。練馬住民、元練馬住民、他、練馬への愛がある方におススメ。

作品プロフィール

1992年刊行。出たばかりの頃に読んでそれっきりだったのを、四半世紀ぶりに再読してみた。徳間書店の今は亡き「SFアドベンチャー」に連載されていた作品群をまとめて書籍化している。内容が尖りすぎてるのと、時事ネタも、多いので流石に文庫化はされなかった模様。

平成初期の練馬の情景を今にとどめる作品に(笑)

1992年の作品なので、言及される練馬の風景は平成初期のもの。カバー折り返しに、孤島に見立てた当時の練馬の地図が載っているのだけれども、練馬桜台駅がまだ存在していないし、環八はルートが違うし、大江戸線は光が丘から練馬までだったりと、随分現在とは違う。

当時の練馬では、谷原のガスタンク以上のランドマークは存在しなかったみたいだけど、今では練馬にも石神井にもタワマンがボコボコ建っているわけで、隔世の感を覚えずにはいられない。

この作品が出た当時は、新井素子の特異なキャラクターを愛でるエッセイ集だったのではないかと思うのだけど、いまとなっては昭和後期から、平成初期までの練馬の情景を垣間見ることの出来る貴重な文献にクラスチェンジしていたりする(笑)。

キャラクターネーミングが西武池袋線由来だった

新井作品ファン的に最も衝撃的だったのは『扉を開けて』や『あたしの中の』『いつか猫になる日まで』のキャラクターネーミングが西武池袋線由来だった事だろうか。

以下、『ネリマ大好き』で明かされた、衝撃のキャラクター命名の真相である。

『扉を開けて』
・富士見台 ディミタ 
・中村橋 カムラ 
・練馬 ネリューラ 
・桜台 ラディン 

『あたしの中の』
・江古田 エクーディ

『いつか猫になる日まで』
・東長崎 ガシハ 
・椎名町 シイナ 
・池袋 ケヴィ 

ネリューラさまの元ネタが練馬駅だったなんて……。

なお、西武線ではないけれど、山手線からの転用もあるみたい。

『いつか猫になる日まで』
・代々木 ヨキ 
・原宿 ラジュー 
・渋谷 シュヴィア 
・恵比寿 ヴィス 
・目黒 メクロ 

もともとのこのBlogの趣旨は、読んだ本に出てくる地名をマップ化することだったのだが(実はそうなのだ)、よって新井素子作品のキャラクター名元ネタ地図もGoogleMap化してみたよ。だから何なのってところだけど、多少なりとも新井素子のネリマ愛が視覚化しやすくなるのではないかしらん。

そして最大の驚きは

本書が刊行されてから四半世紀、さまざまなものが変わっていったのだけれども、もっとも驚くべきことは、いま現在わたし自身が結婚を契機にネリマの住民になっていることである。

おかげで高校生時代あこがれの地であった石神井公園にも行くことが出来た。作品中で言及されている春日町のネリマ大根碑も、新座市内の西大泉の飛び地も健在。板橋区からの独立運動のハナシも出ていたけれど、数年前、なんと板橋区からの独立70周年を練馬区は区をあげて祝ったばかりで、わたしはその祝典イベントにも参加してしまった。もうすっかり練馬のヒトって感じだ。縁とは数奇なもので、ツマに感謝しなくてはなるまい。久しぶりに「いつか猫になる日まで」あたりを再読してみようかな。

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