表紙イラストが変更された作品
2007年刊行。第16回鮎川賞佳作入選作である。作者の似鳥鶏(にたどりけい)は1981年生まれ。本作が最初の作品である。その後七作目まで続いている「市立高校シリーズ」の第一作目でもある。
現在は以下の表紙(イラストレータはけーしん)で流通していると思われるのだが、当初は全く別のデザインだった。東京創元社系のミステリ作品としては、かなりライトなテイストのカバーデザインだと思う。
当初のカバー絵はこんな感じ(イラストレータはtoi8)。シリーズ名も「にわか高校生探偵団の事件簿シリーズ」だった。何故変えた??
個人的には古い方が、作品の空気感とか出ていて断然好み。途中からイラストレータ変えるのは、時々聞く話だけど、最初から読んでいる人間としては違和感あるよね。
あらすじ
とある市立高校のうわさ話。芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るのだという。うわさに怯えて吹奏楽部では練習に来なくなる部員が続出する。美術部の葉山はなりゆきから幽霊出現事件の真相を確かめるべく、芸術棟への居残りをする羽目になる。しかしその夜、本当に幽霊が出現!!愕然とした葉山は文芸部の名物部長伊神に助力を請う。
学校を舞台とした連作短編
芸術棟に出る幽霊のお話。真相を確かめようとすると次々に新たな幽霊が出現する。それぞれの幽霊出現の謎を解き明かしながら、より大きな謎の正体に迫っていく連作短編形式を取っている。
殺人は起きないが、閉鎖された教室内で発生する幽霊事件は、密室モノのバリエーションであるわけで、これは学園ミステリならではの素敵な変奏曲。着眼点は悪くない。事件の解法についても、幽霊ネタだからこそ使えるトリックが使われていてなかなかに面白い。
キャラ立てをあともう少し
新旧ともにカバーデザインは登場人物のイラストを前面に押し出したものになっているので、キャラクター小説的な売り方を版元的にはしたかったのではないかと推測する
ただ、ライトノベル系、もしくはライト文芸の読み手に訴えるなら(作者がそんなこと考えていたかは微妙だが)、キャラ立てはもう少し頑張った方が良い。伊神さんはともかくとして他の登場人物が大人しすぎする。そしてメインヒロインの不在は読み手の感情移入を大きく妨げるので、そっち方面で売っていくなら要改善事項に思えた。
それから細かい事ながら携帯がある時代の設定のわりには、登場人物たちがそれを有効に使っていないのはやはり違和感がある。どうせなら携帯の無い時代の話で押し切れば良かったのに。一つ小技が使えなくなっちゃうからそれを嫌ったのかな。