ネコショカ

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川口俊和『思い出が消えないうちに』明日世界が終るとしても


不思議な喫茶店の物語第三弾

2018年刊行作品。『コーヒーの冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』に続く、シリーズの三作目である。

思い出が消えないうちに

今回の帯によるとシリーズ100万部突破とのこと。スゲー!こういう直球で泣かしに来る作品はやっぱり当たると爆発力があるよね。

あらすじ

時田流は母であるユカリの留守を預かるため、数とその娘幸を連れて、函館の喫茶店「ドナドナ」にやってきた。明治から続くこの店もまた、「とある条件」を満たせば、望んだ時間にタイムスリップできる喫茶店だった。店の噂を聞きつけて、今日もまた一人新しい客が店を訪れる。ただ一度だけ、大切な人に再会できるとしたら、あなたは何を伝えますか?

ルールの確認

タイムスリップが出来る喫茶店は「フニクリフナクラ」だけじゃなかった!なんと北海道の函館にも、同様の力を持つ店があったというのである。

店主は流の母親である時田ユカリ。この能力は時田家の女によって維持されているものなので、おそらくはこちらの方が元祖なのだろう。

では、過去二作で判明している時間移動のためのルールを確認しておこう。

まずは、プロローグで明言されている五つのルール。

一、過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事ができない
二、過去に戻ってどんな努力をしても、現実は変わらない
三、過去に戻れる席には先客がいる 席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ
四、過去に戻っても、席を立って移動することはできない
五、過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ

『思い出が消えないうちに』より

加えて、これまでの作品から以下の法則も明らかになっている。

六、過去に戻れるのは一度だけ(二回目の挑戦は出来ない)
七、コーヒーが冷めてしまっても飲み干さなかった場合は、その時間に取り残され幽霊となる。
八、過去だけでなく未来にもいくことが出来る。但し未来は不確定であり、望んだ人物に必ず再会できるとは限らない
九、過去に戻れるコーヒーを淹れることが出来るのは時田家の女だけである
十、妊娠した子供が女児である時点で時田家の女はその力を失う

めんどくせー(笑)。ルールを確認できたところで、本編の感想に移ろう。

ワンパターン?だけどそれがいい

 

前作から十数年の歳月が経っており、数ちゃんも37歳に!出てくるネット用語を見る限り、時代的にはようやく現代に追いついたような感じ。

本作では、両親に先立たれ不孝な子供時代を過ごした女、下積み時代を支えてくれた妻に死なれた売れっ子芸人、早逝した妹の死を引きずっている姉、幼馴染への想いにようやく気付いた男と、四つの別れの物語が綴られていく。

基本ルールが厳格すぎるせいか、物語は常に喫茶店の中でしか起こらないし、長時間の会話もできない。そのため、お話のバリエーションを作っていくのに苦労してきている印象は否めない。どうしても似た展開になりがちではあるのだが、そこは鉄板の王道展開というべきか。しっかり泣かせる話にもっていけているあたりはさすがである。水戸黄門を見ているような安心感があるのだ。

もし、明日、世界が終るとしたら?

作中で頻出する「もし、明日世界が終わるとしたら 100の質問」だが、今回のテーマは「もし、明日、世界が終るとしたら?」である。明日世界が終わるとして、それでもあなたは、プロポーズをしますか?それでもあなたは、この世に生まれてこようとしますか?

明日が来るかなんてわからない、未来は変わらないのかもしれないけど、それでも伝えておくべき思いはある。大切な人の死。その現実は変わらない中で、どうやって想いを伝えていくのか。このシリーズの良いところは、時間を越えていこうとする者たちだけでなく、その相手側の想いもきちんと描かれているところだろう。双方の想いが通じた瞬間の感動は、お馴染みのパターンではあるのだが、毎回しっかり泣かされてしまうのである。

次はユカリメインのお話かな?

 

 

「ドナドナ」は「フニクリフナクラ」よりも遥かに歴史の古い喫茶店であり、その起源は明治時代にまで遡るのだという。今回、直接登場はしなかったものの、流の母ユカリの存在感は終始強烈なものであった。

いずれは彼女を主役に据えた第四弾が登場するのではないかと期待したい。黒服の紳士の正体も気になるしね。

思い出が消えないうちに

思い出が消えないうちに

 

シリーズ既刊の感想も良かったらどうぞ

第一作『コーヒーの冷めないうちに』の感想はこちらからどうぞ。

第二作『この嘘がばれないうちに』の感想はこちらからどうぞ。

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