北方謙三版「水滸伝」第十四弾!
毎週月曜日にお届けしている北方謙三版「水滸伝」の連続レビュー、先週の十三巻に続いて、本日は十四巻「爪牙の章」をご紹介したい。単行本版は2004年刊行。
集英社文庫版は2007年の刊行である。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★★★(最大★5つ)
終盤前の最後の息抜き、梁山泊の日常パートを存分に楽しみたい方、王英と扈三娘を応援したい方(笑)、伝説の暗殺拳の遣い手に出会いたい方におススメ!
あらすじ
官軍による双頭山襲撃で、梁山泊は大きな痛手を負う。再建の日々が始まる中、人々は束の間の安息の時を過ごす。そんな静かな時間の中でも情勢は着実に変化していく。威勝での反乱軍を青蓮寺による偽装であると見抜いた梁山泊は、事態の打開を図るべく魯達らを派遣する。一方、青蓮寺は空前の規模での一大反抗作戦を計画していたのだが……。
ココからネタバレ
まさかのギャグパート!
なんと、前半はまさかのギャグモード。こうやって場の空気を弛緩させておいて安心させてから、ガンガン殺すわけだな、北方謙三よ。王英と、扈三娘の間にはフラグがガンガン立っているようで、この先の展開が楽しみ。趙林や、張平、第二世代の描写が増えてきたのは楊令伝への布石なのだろう。
そして最終盤の参加メンバー。張青がようやく登場。礫は便利だな。108人もキャラクターがいると、どうしても終盤登場のメンバーは陰が薄くなる。登場が新しい分、忘れ去られないだけ済むというメリットもあるにはあるのだけど。
伝説の暗殺拳!
この巻は小イベント目白押しで、青蓮寺の首魁、袁明の暗殺を企む樊瑞のお話も入っている。袁明を守護するのは中国四千年の暗殺拳の伝承者洪清(そうとしか思えない!)。外傷を与えず、体の内部からじわじわと殺していく恐るべき闇の拳。笑うようなところではないのだが、思わず爆笑してしまった。しかし樊瑞はもう少し頑張るのかと思ったら、あっけなかった。北方作品は、頑張るのかと思われたキャラクターがあっさり死ぬことが多くて、ビックリすることが多い。
青蓮寺がグイグイ来る
そして後半は引き続き官軍のターン。というか青蓮寺総攻撃編。双頭山に痛撃を与えた勢いで、青蓮寺は禁軍、地方軍に水軍まで動員した総勢20万余の一大反抗作戦に打って出る。うーん、盛り上がって来たぞ。ここから終盤まではもう一気呵成。読み始めてから読了するまでがあっという間である。この物語世界に引き込む力は、いつもながらにスゴイと思う。