北方謙三版「水滸伝」第十五弾!
月曜日恒例、北方謙三による「水滸伝」全19巻の連続感想。先週の十四巻に続いて本日は十五巻「折戟(せつげき)の章」をご紹介したい。この巻を含めて、遂に残り五冊である。7月中には全巻紹介が完了する見込みである。
単行本版は2004年に刊行。
集英社文庫版は2007年に登場している。わたしが読んでいるのはこちらの文庫版の方である。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★★★(最大★5つ)
ラスボスの登場にドキドキしたい方、集団戦闘の総力戦を楽しみたい方、花栄の活躍を存分に堪能したい方、とにかく扈三娘が好きな方(笑)におススメ!
あらすじ
官軍の総攻撃が流花寨、二竜山、双頭山、全ての梁山泊の拠点へと押し寄せる。各地で苦戦を強いられ、圧倒的な物量差が梁山泊ををじりじりと磨り潰していく。絶体絶命の危地で、梁山泊はその運命を宣賛の知謀に託す。宣賛の奇策と李応の攻城兵器、そして病み衰えた兵士たち。乾坤一擲の大博打は果たして成功するのか。
ココからネタバレ
童貫がやって来る
ようやくにして、精鋭中の精鋭である童貫率いる禁軍の部隊を引っ張り出し、地方軍、水軍までをも動員しての梁山泊攻めを敢行する青蓮寺の面々。李富と聞煥章としてはここが勝負所。流花寨での戦いに多くの頁が割かれているが、花栄VS趙安・宿元景のバトルが燃える。花栄のビームライフル級の強弓精密射撃はホントに凄まじすぎる。
しかし趙安は死にそうでなかなか死なない。あと一歩で汚名をそそげるところまで行っていた宿元景はハシゴを外された形に。絶望的な死の突撃が燃える。礼を持って強弓ビームライフルで迎え撃つ花栄先生が素晴らしい。
黄信が意外にいい!
今回の見どころその2は黄信。いいキャラクターだ。自己評価の高さと、周囲からの評価が一致しないタイプ。多少報いられても、まだ上があっていいはずと際限のない名声を求めてしまう。もちろん人望はない。成功すれば成功するほど人を遠ざけてしまう人物設定が面白い。人生の袋小路にハマりこんでしまう男の哀しさがほんのり透けて見えるあたりが素晴らしい。
あと、余談ながら、扈三娘との初夜がマジで怖い(笑)。良家の革命家女子(変な表現)を妻にするとこんな感じになるのだろうか?