ネコショカ

小説以外は別ブログにしました!
採用されると原稿料が貰える!
ブックレコメンドへの寄稿始めました

『か「」く「」し「」ご「」と「』住野よる 五人の高校生男女の群像劇


住野よるの第四作

2017年刊行作品。『君の膵臓をたべたい』『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』に続く第四作である。新潮社の文芸誌「小説新潮」の2015年~2016年にかけて連載されていた作品を加筆修正のうえで単行本化したものである。

か「」く「」し「」ご「」と「

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

住野よる作品の謎解きが大好きな方、高校生男女が登場する爽やかな青春小説を読みたい方、ちょっと不思議な恋愛小説を読んでみたい方におススメ!

あらすじ

すこしだけ不思議な力を持つ五人の高校生男女。その力は彼らの生き方を楽にしてくれることもあれば、逆に悩みを深めてしまうこともある。相手を気遣う心、気になって仕方がない、それぞれの想いは複雑に絡み合いもつれあっていく。すれ違い、勘違い?想い人同士の縁は繋がるのか。それぞれの視点から描く、連作短編集。

ココからネタバレ

特殊な力を持つ五人の高校生男女の物語

本作では五人の高校生男女が登場する青春群像劇である。五編の短編が収録されており、そろぞれ視点となる人物が変わる。それぞれの短編作品は単体でも読める内容になっているが、全編を通して読むことでより大きな物語が浮かび上がってくる構造となっている。

各編の主人公は以下の五人(後ろは作中での愛称)

大塚京:京
三木:ミッキー
黒田:パラ
高崎博文:ヅカ
宮里:エル

彼らにはそれぞれ、相手の精神状態を読み取ることが出来る特殊な能力が備わっている。これは本作の最大の特徴である。しかし彼らの持つ能力は、非常に中途半端なもので、正確に相手の意思や気持ちを知ることまではできない。それゆえに悩み、躊躇い、すれ違う。このあたり、読み手としてはなんとももどかしいのだが、そこが本作の魅力にもなっている。

各編のサブタイトルはすべて「かくしごと」なのだが、文字の間に「、」とか「=」とか「↑」みたいな記号が入っている。これは登場人物それぞれの、特殊能力を暗示したものとなっている。この能力に注目しつつ、各章それぞれの「かくしごと」が何なのか、考えてながら読んでみると面白いのではないかと思う。

では、各編ごとにカンタンにコメントしていこう。

第1章「か、く。し!ご?と」

物語の視点となる人物は、京。

彼は、他者の頭上に「、」「。」「!」「?」といった記号が浮かぶの見え、その人物のおおまかな感情を読み取る能力を持っている。感受性が強く、打たれ弱く自尊感情低め。自分に自信が持てない京は、意中の人である三木(ミッキー)にも積極的にアプローチすることが出来ない。

不登校になっていた、隣席の宮里(エル)は何故、学校に来なくなったのか。引っ込み思案のキャラが意図せずして相手を傷つけてしまう悲劇。

メインヒロインのミッキーがファーストエピソードからその魅力を存分に振りまいている。彼女の突破力というか積極性、問題解決能力が図抜けていて眩しすぎる。確かこんな子いたら惚れそうだよね。

京とミッキーの関係がこの先どう発展していくのか(もしくはしないのか)が、この物語のメインストーリーとなっている。

この章の「かくしごと」はミッキーがシャンプーを変えた理由、かな?

第2章「か/く\し=ご*と」

物語の視点となる人物は、ミッキー。

彼女は相手の心臓の部分にバーのようなものを見ることが出来る。このバーはプラスの感情とマイナスの感情のバランスを示しており、人間関係を良化するには、この傾きをプラスに傾ければオッケーだとミッキーは信じている。ただし、自分のバーは見ることが出来ない。

根っからの主人公属性で、ポジティブシンキングの塊。文化祭のクラス演目でもヒーローショーの主役を演じる。何でも出来てしまうようで、意外に詰めの甘いところがあり、今回は親友の黒田(パラ)によって救われる。

この章の「かくしごと」は、舞台が始まる前にミッキーの手を握ったのは誰か?ということかな。

第3章「か1く2し3ご4と」

物語の視点となる人物は、パラ。

彼女は相手の鼓動を読み取ることが出来る。心臓の動きはドキドキしているのか、安定しているのか。そこから相手の心の状態を読み取っていくのである。

パラのあだ名の由来は「パッパラパー」と酷いものだが、その名とは正反対に内面では冷静に相手を観察する外面と内面のギャップが激しいキャラクターである。テンションは常に高めだが、内面には醒めた観察者のもう一人のパラが居る。

もちろんこんな立ち居振る舞いがそうそう上手くいくわけはなくて、修学旅行でオーバーフローして倒れてしまう。一番、無理をして生きている感じがして切ない。個人的にはこういうタイプが好きかな。世話焼きの知的キャラなのに、運動神経ゼロなところも共感持てる。

この章の「かくしごと」はヅカに贈られた鈴の謎かな。

第4章「か♠く♢し♣ご♡と」

物語の視点となる人物は、(高崎博文)ヅカ。

彼は、相手の頭上に浮かんだトランプのスートで感情を読み取ることが出来る。♠(スペード)は喜び、♢(ダイヤ)は怒り、♣(クローバー)哀しみ、そして♡(ハート)は楽しみである。

美形で高身長、しかも運動部所属と見るからにスクールカースト上位層。嫌味なく誰とも仲良くなれる強い社交性を持ち、まったく属性が異なる京とは親友関係にある。

そんな彼にも悩みはある。相手の心が見えすぎてしまうが故に、逆に相手を気にしてしまい奥深くまで踏み込めない。自分の心には正直になれないでいるのである。

ヅカの「かくしごと」は、中学時代、友情を恋愛と勘違いして、ミッキーと一時的に交際していたこと、、かな。

第5章「か→く↓し←ご↑と」

物語の視点となる人物は、エル。

彼女は他者の恋心を、矢印の向きと大きさで知ることが出来る。ただし、自分に向かった矢印は見えない。だが、彼女はそれを自分が誰からも好かれていないからだと誤解している。

かつて不登校状態に陥っており、京と同様に心にダメージを受けやすいキャラクターであり、常に控えめで自分を前に出そうとはしない。

読者をずっとヤキモキさせてきた、京とミッキーの関係性に決着がつく回であるが、内向的キャラのエルが、二人の仲を取り持つことになる展開が嬉しい。

この章の「かくしごと」は、京とミッキー、それぞれの両想いなのに、なかなか噛み合わない部分を指しているのか?それとも自身の想いを推させて二人を祝福するパラの気持ちを意味しているのか?どちらだろう。その両方かな。

ちなみにパラも京を好きであることはこちらの記述から読み取ることが出来る。

突然、彼がちらりと私の後方を見るやいなや、彼の体から飛び出した矢印が私を貫いた。

(略)

先にパラが気づいてくれて手をあげた。彼女の体からも、矢印が出ている。

パラの動きでやっと気がついたミッキーもこちらに大きく手を振り、同時に体から矢印が出て私を貫いた。

『か「」く「」し「」ご「」と「』p223より 

 位置関係的に、パラ&ミッキー・エル・京は一直線の関係になっていたと思われ、全ての矢印がエルを貫通している。京の矢印は当然ミッキーへ。一方パラ&ミッキーの矢印もエルを貫通するわけだから、二人の想い人は京であることがわかる。

プロロオグとエピロオグで話しているのは誰?

親密な間柄の男女の会話であるように思え、交際開始後のミッキーと京なのではないかと思われるが確証はない。男子は京で確定だと思うけど、口調的にこの喋り方はパラでも違和感ないと思うんだよね。

か「」く「」し「」ご「」と「

か「」く「」し「」ご「」と「

  • 作者:住野よる
  • 発売日: 2017/09/01
  • メディア: Kindle版
 

スペシャルストーリー か「」く「」し「扉

単行本の背表紙にQRコードが掲載されているのに気づかれた方も多いと思う。QRコードを読み取るとこちらのページにリンクする。

キャラクターごとのカンタンなクイズに正解すると、それぞれのスペシャルストーリーが読める仕掛けになっている。もちろん住野よるのオリジナルである。

本編では描かれなかった小ネタが満載なので、ファンの方は要チェックである。

コミカライズ版もある!

 『か「」く「」し「」ご「」と「』は二駅ずいによる、コミカライズ版が刊行中である。現在までに第二巻までが刊行されている。単行本とキャラのタッチがかなり違うので、最初は戸惑うかな。

か「」く「」し「」ご「」と「 1 (BUNCH COMICS)

か「」く「」し「」ご「」と「 1 (BUNCH COMICS)

  • 発売日: 2019/04/09
  • メディア: コミック
 

なお、コミカライズ版の最初の三話と最新話はこちらのサイトで読むことが出来る。

www.comicbunch.com

その他の住野よる作品の感想はこちらからどうぞ