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『犬はどこだ』米澤穂信 犬を探す探偵の物語 

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米澤穂信初の大人が主人公の作品

2005年刊行。東京創元社のミステリフロンティアシリーズの一作として登場。2006年版「このミス」国内部門第八位にランクインした作品。

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

紺屋S&Rシリーズの第一弾、ではあるが、今のところ第二弾は出ていない。

米澤穂信の六作目。2008年に同社から文庫版が発売されている。

犬はどこだ (創元推理文庫)

犬はどこだ (創元推理文庫)

 

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

学生が主人公ではない初期の米澤穂信作品を読んでみたい方、探偵(但し本格系でない)が活躍する作品を読みたい方、ハードボイルドな世界にちょっとだけ憧れているけど、現実はなかなかままならない!という方におススメ。

あらすじ

都会での生活に敗れ、紺屋は故郷で犬探しの事務所を立ち上げる。しかし持ち込まれたのは失踪した女性の捜索と村の古文書の解読だった。押しかけパートナーとなったハンぺーと共に調査を開始する紺屋。一見、なんの関係もないように見えた二つの出来事は思わぬところでリンクしていた。真相にたどり着いた紺屋が見たものとは……。

ココからネタバレ

主人公が高校生ではない米澤作品

『氷菓』『愚者のエンドロール』といった古典部シリーズや、『さよなら妖精』のように高校生を主人公とした物語ばかりを書いてきたこの作家としては、本作が主人公が学生ではない初めての作品と言える。

主人公25歳は米澤作品中最年長(刊行当時)だ。理論派、やる気無し、訳ありの主人公と、行動派、やる気アリのハンぺー。二人の視点で交互に物語は描かれていく。フリーターだけど、古き良き時代の探偵スタイルに憧れるハンぺーはなかなかに良いキャラクターだった。

別々の事件に思えた二つの出来事が実は……、というのはよくあるパターンながらも、主客を見事にひっくり返してみせる終盤の神展開に唸らされる。二人の視点の切り替えで物語を進行させておきながら、最終的には主人公の視点に物語は収斂してしまうので、ハンぺーサイドの物語が置き去りにされてしまうのが難と言えば難だろうか。

行間を読んでいくとけっこう怖い

ネット上のトラブルを扱った部分で、当事者がその筋の専門職でありながらも技術的に脇が甘い部分が散見されていて、読んでいて首をひねる部分があったのだけれども、それが実は周到な罠であることが終盤に判明し感服させれた。ある意味、凄絶なまでの負の信頼関係が無ければ成立しなかった仕掛けだよね。行間に漂うあの人の執念を丹念に読んでいくとかなり怖いと思うよ。

それにしても<GEN>さんに主人公は心許しすぎ(笑)。この部分だけ、ちょっと突拍子もなさ過ぎて非常に違和感を覚えた。守秘義務守ろうよ。

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

  • 作者:米澤 穂信
  • 発売日: 2005/07/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

その他の米澤穂信作品の感想!

〇古典部シリーズ

『氷菓』/『愚者のエンドロール』/『クドリャフカの順番』/ 『遠回りする雛』/『ふたりの距離の概算』/『いまさら翼といわれても』 / 『米澤穂信と古典部』

〇小市民シリーズ

『春期限定いちごタルト事件』/『夏期限定トロピカルパフェ事件』 『秋期限定栗きんとん事件』/ 『巴里マカロンの謎』

〇ベルーフシリーズ

『王とサーカス』  / 『真実の10メートル手前』

〇図書委員シリーズ

『本と鍵の季節』 / 『栞と嘘の季節』

〇その他

『さよなら妖精(新装版)』/『犬はどこだ』/『ボトルネック』/『リカーシブル』 / 『満願』 /『儚い羊たちの祝宴』『追想五断章』『インシテミル』『Iの悲劇』 / 『黒牢城』