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『水の迷宮』石持浅海 水族館を舞台としたミステリ作品


ノベルス版の表紙は特殊なデザインだった

2004年刊行作品。『アイルランドの薔薇』『月の扉』に続く石持浅海(いしもちあさみ)の三作目である。

本作のノベルス版の装丁はちょっと凝っていた。全体の2/3を帯が覆っていて、これを外すとカバーは真っ白。実質的に帯がカバーイラストの役割を果たしていて、「帯は外して保存派」には扱いに困る装丁となっていた。さすがにAmazonの書影は帯ありモードで載っているね。これ、下2/3部分がこれ全て帯なのだ。

水の迷宮 (カッパノベルス)

光文社文庫版は2007年に登場している。こちらはノベルス版のような凝った装丁はやめているようす。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

一般人には馴染みのない特殊な場所を舞台とした本格ミステリ作品を読んでみたい方。通常とは異なる常識、考え方が重要な意味を持ってくるミステリ作品に興味がある方。水族館が大好きな方。初期の石持浅海を読んでみたい方におススメ。

あらすじ

かつては閑古鳥が鳴くような寂れた場所でしか無かった羽田国際環境水族館。しかし、大胆な方針転換を打ち出しイメージアップに成功し、今では都内有数の人気施設に変貌していた。そんな水族館に一通の脅迫メールが届けられる。そして展示生物を狙った不気味な攻撃が始まり、遂には殺人事件にまで発展する。脅迫者の狙いは何なのか。三年前に起きたある男の死から全ての物語は始まっていた……。

ここからネタバレ

水族館を舞台とした殺人事件

独特の閉鎖環境(クローズドサークル)。警察不介入。仲間内だけでの犯罪。いかにもという感じの石持浅海的作品と言える。端正に積み上げられた謎と、周到に張り巡らされた伏線が最後に綺麗に消えてくれるのは相変わらず気持ちが良い。

ただ、今回は独特の閉鎖環境を舞台としただけに、一般的な価値観、倫理観からは相当に逸脱した形で決着が図られている。関係者同士の慣れあいに満ちた解決法。共通の利害関係を有する者たちだから選べる落としどころ。これって、部外者の目線から見ると、なかなか素直に納得できなくてもやもやした気持ちが残るのだが、わたしだけだろうか?

一万歩譲って事故であるならまだしもと思うのだが、明確な殺意をもって行われた殺人を見逃すってありなのだろうか?そもそも同じような事件が三年前にも起きているというのに、警察の対応がザル過ぎるもの難点。さすがに怪しまれると思うのだけど。

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