ネコショカ

毎日夜20時更新。ネコショカは猫の書架
雑食系の書評Blogです。なんでも節操なく読んでます
基本ネタバレありなので注意してね

『ミナミノミナミノ』秋山瑞人、第二の未完結作品


「イリヤっぽい話」として書かれた作品

2005年刊行。作品単位で考えると、秋山瑞人の五作目の作品になる。

ミナミノミナミノ (電撃文庫)

また夏のボーイミーツガールものなのか!

平凡な少年に、ちょっと(すごく)わけありの女の子という組み合わせはどうしても、秋山瑞人の前作『イリヤの空 UFOの夏』を思い出してしまう。しかもイラストレータも駒都えーじと来ているので二匹目のドジョウ狙いがありありと透けて見えて、志的にはこれってどうなのよとツッコミを入れたくなってしまう。

と思って、あとがきを見てみると、そのものズバリの事が書いてあった。

(前略)

「イリヤがアニメになります」
と。
もうね、狂喜乱舞ですよ。
コンビニに煙草を買いに行くときにもスキップですよ。
んで、アニメ化というのはもちろん大チャンスでありますから、どうせなら次のタマもイリヤっぽい話にしてアニメのタイミングにぶつけましょう、みたいな話になってきて、喜び勇んでネタを詰めなおす私。(後略)

『ミナミノミナミノ』あとがきより

おいおい、完全に確信犯である(笑)。

あらすじ

夏休み。叔母の口車に乗せられて孤島、岬島に一人で向かうことになってしまった武田正時。島は定期便すらない僻地だったが、訪れた正時は島民たちの熱烈な歓迎を受ける。そこで出会った少女春留は、見た目のかわいらしさとうらはらに、周囲とうち解けることがない気むずかしい性格の持ち主だった。次第に島の生活に慣れていく正時であったが、島には信じられない秘密が隠されていた。

面白くなりそうだったのに

とはいえ、そんな事情を取っ払って読んでみるとそれでも面白いのが秋山瑞人作品。

8回もの転校を繰り返してきたせいか、世慣れていて異文化への順応が早い主人公。いささかとっつきにくいヒロインともアッサリ仲良くなって……と思わせておいて、いざヒロインの秘密が明らかになるやいなや、ドン引きの腰砕け状態。悩める青少年の葛藤を描かせるとこの作家は相変わらず抜群に上手いのである。

傍観者であること慣れ過ぎた主人公。謎めいた島と、いかにも何か隠していそうな地元民、そしてあからさまに怪しいヒロインと、定番ながらも面白くなりそうな要素は詰まっていたのだけど、残念ながらこの作品はその後続きが出ていないのである。

秋山瑞人、第二の未完作品に……。

あとがきでは次の巻は出来るだけ早めに書くとあったものの、その後、十余年を経ても続巻が出ていない。いつかは続巻を!という気持ちもかつてはあったのだが、以下のインタビュー記事を発見したので引用させて頂く。

「ミナミノミナミノ」の続編は…?
あれはもういい(笑)。もし、タイミングがあれば…
プロット上は前後編の2部構成だったらしい

棚からパルチャギさんの 2007. 11. 04記事(古橋秀之・秋山瑞人講演会)より

インタビューを読む限り望みは無さそう。仮に続きが出ていたとしたら、次の二冊目で完結だったようだ。

本作以外の秋山瑞人作品は、単巻でも最低限のエピソードは完結していて、一冊だけ読んでもそれなりに楽しめる構成となっていた。しかし本作は二巻構成?の予定があったためか、一冊目は完全に前ふりに徹しており、単巻では消化不良感だけが残るという残念な作品になっている。良作になる可能性はあっただけに、勿体ないなあ。

ミナミノミナミノ (電撃文庫)

ミナミノミナミノ (電撃文庫)

 

秋山瑞人作品全作レビューも残り僅か。あとは『龍盤七朝 DRAGONBUSTER』の二作を書けばコンプリート出来る見込み。

その他の秋山瑞人作品の感想はこちらから!

代表作『イリヤの空 UFOの夏』の感想はこちらからどうぞ。

デビュー作『E.G.コンバット』の感想はこちらからどうぞ。

第二作『鉄コミュニケイション』の感想はこちらからどうぞ。

第三作『猫の地球儀』の感想はこちらからどうぞ。

第六作『龍盤七朝 DRAGONBUSTER 01』の感想はこちらからどうぞ。

www.nununi.site