ネコショカ

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『月の扉』石持浅海、ハイジャック機の中に密室死体!


石持浅海、二番目の作品

2003年刊行作品。2002年に『アイルランドの薔薇』でデビューした、石持浅海の二作目である。2004年版の「このミス」で国内編の第8位に入っている。

月の扉 (カッパ・ノベルス)

光文社文庫版は2006年に登場している。

月の扉 (光文社文庫)

月の扉 (光文社文庫)

 

本作は、石持作品の主要探偵のひとり「座間味くん」が登場する最初の作品である。座間味くんは、本作以降も『心臓と左手』『玩具店の英雄』『パレードの明暗』で登場するので、興味のある方はチェックしてみて頂きたい。

あらすじ

那覇空港。国際会議を目前に控え、厳戒態勢が取られていたその場所で事件は起きた。幼児を人質に機内に立てこもった三人のハイジャック犯たち。彼らの要求は、不当に逮捕されている「師匠」こと石嶺孝志をこの場に連れてくることだった。機内の制圧に成功した三人だったが、やがて密室の筈のトイレから乗客の死体が発見されたことで、事態は思わぬ方向に……。

ハイジャック+密室の謎

ハイジャックされた飛行機の中で発見された他殺死体!

この物語はハイジャックサスペンスと期待させておいて、実は密室殺人の謎もやっちゃいますという、とても欲張りな作品である。犯人の三人はハイジャックを成功させるのに精一杯なので、降って湧いたような密室殺人には構っている暇がない。ってことで、殺人事件の方は手近にいた乗客に探偵役を外注してしまうのである。この発想はなかなか面白い。

クローズドサークルの使い方が上手い

先日紹介した、『アイルランドの薔薇』や後に登場する『扉は閉ざされたまま』でも顕著に判るのだが、石持浅海は閉鎖環境下での物語の筋運びがホントに上手。複数の謎を小出しにしながら読み手の興味を巧くつないでいき。一度読み始めると止まらない。300頁弱と適度な分量でしっかり完結しているのも、重厚長大化の傾向がある昨今のミステリ界にあってはかえって新鮮で好感が持てる。

難ありとすれば、強引というかありえなさ過ぎる三人の犯行動機だろうな。これはこれで美して悪くはないけど。一抹の奇跡の可能性を残してぼかし目に終わったラストと共に好みの分かれるところだろう。

月の扉 (カッパ・ノベルス)

月の扉 (カッパ・ノベルス)