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ゴーストハント(悪霊)シリーズ新旧読み比べ(4)『悪霊はひとりぼっち』と『ゴーストハント4』


ゴーストハント(悪霊)シリーズ新旧読み比べ四回目!

小野不由美のゴーストハント(悪霊)シリーズを、旧作、新作両方読んだ上でレビューするシリーズ。「十二国記」の全巻感想なんてものを始めてしまったので、長らく中断していたが、ようやく再開!

本日ご紹介するのはシリーズ第四作『悪霊はひとりぼっち(ゴーストハント4)』である。

『悪霊はひとりぼっち』1990年に講談社X文庫ティーンズハートレーベルから刊行された。『悪霊がいっぱい!?(ゴーストハント1)』『悪霊がホントにいっぱい!(ゴーストハント2)』『悪霊がいっぱいで眠れない(ゴーストハント3)』に続くシリーズ四作目である。

悪霊シリーズは2010年から、「ゴーストハント」シリーズの名称で、全面改稿の新装版が登場している。『悪霊はひとりぼっち』は2011年に、『ゴーストハント4 死霊遊戯』のタイトルで再刊されている。

ゴーストハント (4) 死霊遊戯 (幽BOOKS)

なお、メディアファクトリー版は、現在角川での文庫版が順次刊行中であり、本作については2020年12月に刊行予定。詳しくは、角川文庫(カドブン)の公式情報をチェックしてみて!

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

学園ホラーが好きな方、最初期の小野不由美作品を読んでみたい方、マンガ版を読んでいたり、アニメ版を見ていたりして原作も読んでみたいと思った方におススメ。

あらすじ

緑陵高校で起こる怪事件の数々。LL教室に現れる子どもの霊。教室で暴れる実体のない黒い犬。更衣室での再三のボヤ騒動。謎の集団食中毒。生徒会長、安原修の依頼を受け、調査に乗り出したナルたち、渋谷サイキックリサーチであったが、教師側の高圧的な態度と、抑圧された生徒たちの関係性に危惧を覚える。麻衣が幻視した無数の人魂の正体は?そこには恐るべき仕掛けが施されていた。

ここからネタバレ

”ヲリキリさま”が招く災厄

この物語では、自殺した美術部の一年生、坂内が生前に残した”ヲリキリさま”が、校内の生徒間で大流行し、膨大な数の霊を召喚してしまう。”ヲリキリさま”は一見するとコックリさんのような降霊術だが、その裏に霊を集め共食いをさせ、呪詛に転換させる邪悪な仕掛けが施されている。

呪詛の対象者は、校内でもっとも嫌われている生活指導の教師松山。生徒への締め付けが厳しく、管理教育が徹底している緑陵高校を象徴する人物である。

興味深いのは、呪う人間が坂内本人ではなく、校内の生徒ほぼ全員であると点であろう。面白半分に大流行した”ヲリキリさま”は、おそらく坂内の当初の意図以上に強大な呪いの仕組みとして成長してしまう。教師によって押さえつけられ、抑圧されてきた生徒たちの内面の鬱屈が、図らずも呪いの形で結実していく展開が面白い。

本作の新装版でのサブタイトルは”死霊遊戯”、コミカライズ版(及びアニメ版)では"禁じられた遊び"となっている。実にこの作品を象徴したタイトルネーミングではないだおるか。

旧版との違いは?

旧版では緑陵高校は「車で三時間。船橋、千葉の先」としており、千葉県内の何処かの学校であると思えるのだが、新版ではその描写がなくなり、都道府県が特定できなくなっている。また、旧版では緑陵高校は私立校のような雰囲気があるのだが、新版では明確に公立高校(トップクラスではない、ほどほどの進学校)とされている。立地的にも旧版では奈良時代に存在した墓地の上にあるとされていたものが、新版ではかつての古墳の跡地であり、中世に入り捨て置き型の墓地になったと要素が付加されている。

基本的なストーリーは変わらないが、新版では生徒たちに学校側から緘口令が敷かれており、容易に情報が入手できないようになっている。また、新キャラとして校務員の土岐田次期生徒会長の錦戸が登場している。土岐田は校内においては珍しい生徒側の人物。錦戸はさすがに生徒会の人間が、安原一人では無理があると判断して追加されたのかもしれない。

また、真砂子の能力について、渋谷サイキックリサーチのメンバーが、実質的には霊媒というよりもサイコメトリストなのではないかとされていたものが、新版ではクレヤボヤンス(千里眼)もしくはポストコグニション(過去視)とされている。サイコメトリストは物体に残った残留思念を読み解く能力者を指すものなので、クレヤボヤンス、あるいはポストコグニションの方が適切であるとして改められたのであろう。

また、非常に細かい違いだが、旧版では麻衣の体重が「体重四十とンキロ」とあったのが、新版では「体重ンキロ」に変更されている。十の位ですらも、体重の明言は許さないとする麻衣の強い意志を感じる(笑)。

ゴーストハント (4) 死霊遊戯 (幽BOOKS)

ゴーストハント (4) 死霊遊戯 (幽BOOKS)

 

コミカライズ版は旧版準拠

いなだ詩穂によるマンガ版ではメインタイトルが『ゴーストハント』に。またサブタイトルが「禁じられた遊び」として2000年の『なかよし』3~10月号に掲載された。刊行時期的に当然、旧版をベースとした内容となっている。

コミックスでは4巻と5巻に収録。

ゴーストハント(4) (なかよしコミックス)
 
ゴーストハント(5) (なかよしコミックス)
 

講談社漫画文庫版では3巻に収録されている。

ゴーストハント(3) (講談社漫画文庫)

ゴーストハント(3) (講談社漫画文庫)

 

旧版とコミカライズ版の違いとしては、『悪霊がいっぱいで眠れない(ゴーストハント3)』で登場した笠井さんやタカが、SPRに顔を出していたりするのだが、これが完全にカットされている(笠井さんがより救われない感じに……)。

物語の展開的には、ナルたちが学校に着くなり、黒い犬の霊が登場するなど、エピソードの順番が入れ替えられ、より緊迫感を高める工夫が施されている。

また、印刷室の鬼火に麻衣が敗れた後、綾子のマンションに皆が移動するシーンがあるのだが、これもバッサリカットされている。

アニメ版はコミカライズ版がベースに

2006年から2007年にかけてテレビ放映されたアニメ版『ゴーストハント』では、第14話から第17話までの「FILE6」に、『悪霊はひとりぼっち(ゴーストハント4)』のエピソードが収録されている。

アニメ版は概ねマンガ版の内容に準拠しているが、実在する超能力者に関する蘊蓄パーチが削られている。専門的内容に過ぎると判断されたのだろうか。

坂内の定期券で区間が「千葉-緑陵」となっており、千葉県内が舞台である可能性が読み取れる。

ゴーストハント FILE6「禁じられた遊び」上巻 [DVD]
 
ゴーストハント FILE6「禁じられた遊び」下巻 [DVD]
 

これまでの感想はこちらから

第1作『悪霊がいっぱい!?(ゴーストハント1)』の感想はこちらからどうぞ。

第二作『悪霊がホントにいっぱい!(ゴーストハント2)』の感想はこちらからどうぞ。

第三作『悪霊がいっぱいで眠れない!(ゴーストハント3)』の感想はこちらからどうぞ。

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