ネコショカ

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悪霊シリーズ新旧読み比べ(3)『悪霊がいっぱいで眠れない』と『ゴーストハント3』


ようやく第三弾!

小野不由美の悪霊シリーズを、旧作、新作両方読んだ上でレビューするシリーズの三回目。毎月更新のはずが、隔月更新になってて、ホントにゴメンナサイ。7月は公私共にやたらに忙しかったのだ(言い訳)。

さて、今回はシリーズ第三作『悪霊がいっぱいで眠れない(ゴーストハント3)』をご紹介したい。

ゴーストハント (3) 乙女ノ祈リ (幽BOOKS)

悪霊シリーズの全巻レビュー三冊目!

『悪霊がホントにいっぱい!』は1990年刊行作品だ。『悪霊がいっぱい!?』『悪霊がいっぱいで眠れない』に続くシリーズ三作目である。

悪霊がいっぱいで眠れない (講談社X文庫―ティーンズハート)

悪霊がいっぱいで眠れない (講談社X文庫―ティーンズハート)

 

「悪霊シリーズ」は1989年から1994年にかけて全七作(八冊)が刊行されている。その後、講談社X文庫のティーンズハートレーベルが無くなってしまったこともあり、2000年代に入ってからの本シリーズは、入手困難な時代が続いていた。

しかし2010年に入って、メディアファクトリーから全面改稿となる新装版のリリースが開始された。新装版のリリースに際して、シリーズタイトルは「ゴーストハント」に変更。更に各巻ごとにサブタイトルが添えられるようになった。

新版となる『ゴーストハント3』は2011年刊行。サブタイトルは「乙女ノ祈リ」である。

ゴーストハント (3) 乙女ノ祈リ (幽BOOKS)

ゴーストハント (3) 乙女ノ祈リ (幽BOOKS)

 

あらすじ

湯浅高校では、異常な数の怪異が頻発していた。座った者が必ず同じ事故に見舞われる呪われた席。キツネツキの少女。陸上部の部室に起きる怪現象。窓から見える手。調査に乗り出したナルたち、渋谷サイキックリサーチの面々は、次から次へと発生する心霊現象の量に圧倒される。しかし、霊媒の真砂子は告げる。「この場所に霊はいない」と。事件の真相は果たして?

いちばん怖いのは生きている人間

今回のテーマは「呪詛」。学校を舞台とした怪異譚ではあるが、第一巻『悪霊がいっぱい!?(ゴーストハント)』が、学園ならではの古くから伝わる学校七不思議的な素材を扱っていたのとは対照的に、「作られた」怪異を主題としているのが特徴である。

また、心霊現象とは紙一重、とても近しい現象とも言える超能力(特に今回はPK)について、深く切り込んだ一作である。

頻発する心霊現象。しかし人に害をなすのは霊ではなく、生きている人間であったという結末はなんともやりきれない。シリーズの中でも、読後感のビターさでは随一と言える作品と言えるかもしれない。

旧版との違いは?

今回も基本的なストーリーはもちろん変わっていないが、新版では「作られた」新しい怪異(新怪談)が、眠っていた古い怪異(旧怪談)を呼び覚まし、枯れ尾花的に霊とは関係の無い二次災害までを引き起こしてしまうという点が、より強調されているのが特徴的である。

呪詛を行った犯人が悪いのは当然のことだが、新版ではそれだけにとどまらない。人々の増幅された恐怖心が、犯人の思惑すら超えて暴走していく展開は、本作のテーマとも言える「結局いちばん怖いのは人間の心である」が、より強く描かれており、物語の骨格が明確にされているのである。

新版での追加要素としては、怪異譚の大幅増量や、湯浅高校における心霊現象の扱い、被害の歴史についてより詳しい説明が書き足されている。

また、ナルたちを襲う悪霊(天井から出てくるやつ)については、登場タイミングが新版ではかなり後半に移動している。物語の構成を考えると、この方が効果的であると判断したのであろう。

コミカライズ版は殺伐度がアップ

本作についても、いなだ詩穂によるマンガ版が存在する。コミカライズされた際に、タイトルは「ゴーストハント」に改められており、結果的にこちらが小説の新版のタイトルにも採用されている。

 『悪霊がいっぱいで眠れない(ゴーストハント3)』のエピソードが収録されているのは、単行本では第三巻。サブタイトルは「放課後の呪者」。

ゴーストハント(3) (なかよしコミックス)

ゴーストハント(3) (なかよしコミックス)

 

講談社漫画文庫版では第二巻に収録されている。

ゴーストハント(2) (講談社漫画文庫)

ゴーストハント(2) (講談社漫画文庫)

 

原作からの変更点としては、もともと存在感が希薄であった沢井さん(笠井さんの超能力仲間)が完全にいなかったことに。

また、小説版では新旧共に、笠井さんやタカと麻衣とのガールズトーク的な恋バナ描写があり、数少ない和み要素となっていたのだが、これがコミカライズ版ではざっくり削られている。校内で孤立していた笠井さんに、仲良くしてもらえる生徒が出来たことは、僅かな救いであっただけに残念。確実に殺伐度はアップしている。

よりビターな結末のアニメ版

2006年から2007年にかけてテレビ放映されたアニメ版『ゴーストハント』では、第7話から第10話までの「FILE3」に、『悪霊がいっぱいで眠れない(ゴーストハント3)』のエピソードが収められている。

ゴーストハント FILE3「放課後の呪者」上巻 [DVD]

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ゴーストハント FILE3「放課後の呪者」下巻 [DVD]

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このアニメ版はコミカライズ版をベースとしているので、より笠井さんが救われない展開になっている。ホントに可哀そう。

コミカライズ版からの更なる変更要素として、真砂子が襲撃されるシーンが追加されている。これは緊迫感を煽るためか?また、真犯人が誰であるかを絞り込みやすくする描写が追加されている。

更に、小説版、コミカライズ版では使われていた「ゲラリーニ(ユリ・ゲラーに影響を受けて超能力に開眼した子どもたち)」という単語が使用されなくなっている。これはセリフだけでは視聴者に理解させるのが難しいと判断したのかな。

そして、最後にナルが真犯人を指摘するシーンでは、見舞いに訪れた真犯人が、持参した花に人形(ひとがた)を仕込んでおり、その凶悪性がより強調されている。これを目の前で見せられるんだから、笠井さんのメンタルダメージが、更に酷いことになってそう。その後のフォローもないから、より悲惨に見えてしまう。

これまでの感想はこちらから

第1作『悪霊がいっぱい!?(ゴーストハント1)』の感想はこちらからどうぞ。

第二作『悪霊がホントにいっぱい!(ゴーストハント2)』の感想はこちらからどうぞ。

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