グインサーガ外伝、三か月連続刊行の二冊目!
2023年刊行作品。グインサーガ外伝としては27作目。書き手はグインサーガ外伝26巻の『黄金の盾』でデビューした円城寺忍(えんじょうじしのぶ)である。
前作のグイン・サーガ外伝28巻『サリア遊郭の聖女1』の続篇で、全三巻構成となっている。次巻の『サリア遊郭の聖女3』で完結となる。
あらすじ
ゴーラ三国のひとつクム。快楽の都タイスを訪れたマリウスは、西の廓、サリア遊郭で見習いの遊女ワン・イェン・リェンに出会う。彼女を助けたことから、最高遊女のジャスミン・リーとの知遇を得たマリウスは、この地で頻発する見習いの遊女の連続失踪事件に巻き込まれていく。事件の背景には、この街の暗い歴史が横たわっているようなのだが……。
マリウス潜入するも、またしても囚われの身に
消えてしまったジャスミン・リーと、ワン・イェン・リェンの行方を求めて、マリウスはタイスの闇妓楼の謎に迫っていく。闇妓楼は、年端も行かぬローティーンの少女たちばかりをあつめた非合法の売春窟。だが、闇妓楼の主催者には、単なる金儲け以上の目的があるっぽい。
ジャスミン・リーの上客であるミロク教徒にして、タイスきっての大商人であるヨー・ハンから経済的な援助を取り付けたマリウスは、勇躍、闇妓楼に乗り込んでいく。でも、あっさり潜入がバレて捕まってしまうのは、なんともマリウスらしいところ。ここでは意外にもヴァレリウスが助けに入り、長年のグイン読者としてはニヤニヤしてしまうところだろうか(この時期のヴァレリウスにそんな余裕があったかどうかは微妙だが)。
子どもたちを守りたい
本作では、闇妓楼の少女として14歳のタオが登場する。この作品は時系列的にミアイル公子暗殺事件の直後に設定されているので、この年頃の子どもたちの安否に、マリウスは非常に敏感になっている。かつて、うら若き公子を自らも関与するかたちで死なせてしまったマリウスが、またしても14歳の少女を目の前で殺害されてしまう。
マリウスが抱く「哀しみを抱えたすべてのこどもたち」、「孤独で傷ついた魂たちへの愛しさ」は、おそらくはかつての自分。パロ王家に生まれながらも、不幸な事件の数々から国を出奔するに至ったマリウスのこれまでの人生が投影されているものと思われる。『サリア遊郭の聖女』は、そんな不幸な少年少女時代を送った、すべてのものたちの心の傷に寄り添っていこうとする物語なのかもしれない。
メッサリナ登場、そしてラスボスは?
本作の終盤では、前巻から登場していたリナおばさんこと、メッサリナが敵キャラクターとしてクローズアップされてくる。メッサリナは毒使いの達人で、この世界ではロクスタと並び称される人物であるらしい。
ちなみに、同名の歴史上の人物にはローマ皇帝クラウディウスの后妃、悪女として名高いメッサリナが存在する。さらにちなむと、ロクスタもローマ時代の著名な毒使いとして知られているので、作者的になんらかのこだわりはあるのかもしれない。
作中でなんどか言及されている存在に冥王(レーデス)が存在し、今後はこの人物がラスボスとして君臨してくることになるのかな?