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グイン・サーガ外伝27巻『サリア遊郭の聖女1』円城寺忍 三か月連続刊行、久しぶりの「月刊グインサーガ」!

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栗本薫亡きあとのグインサーガ外伝五作目

2023年刊行作品。グインサーガ外伝としては27冊目。作者の円城寺忍(えんじょうじしのぶ)は、2014年刊行、グインサーガ外伝26巻の『黄金の盾』がデビュー作。本作が9年振りの新作で、待望の第二作ということになる。この人、本業が別にあるからなのだろうけど、グインサーガ外伝しか書いてない稀有な作家である。

サリア遊廓の聖女 1 (ハヤカワ文庫JA)

外伝の既刊27冊のうち、栗本薫が生前に22巻までを書いている。栗本薫没後、23巻以降はシェアードワールドということで、栗本薫以外の作家が手掛けている。ラインナップはこんな感じ。

久しぶりの「月刊グインサーガ」が実現!

円城寺忍によるグインサーガ外伝『サリア遊郭の聖女1』は、タイトルに「1」とある通り、本巻だけでは完結しない。全三巻が2023年4月~6月にかけて、毎月刊行されることが予告されている。

これは、毎月「グインサーガ」が刊行される、懐かしの「月刊グインサーガ」状態が、久しぶりに復活したことになる。異常に筆の速かった栗本薫は、「グインサーガ」の二か月連続刊行くらいは当たり前、最盛期には三か月連続で「グインサーガ」が刊行されたこともあった。調べてみた限り、最後の「月刊グインサーガ」状態は、正篇116巻『闘鬼』~正篇118巻『クリスタルの再会』ではないかと思われる。

  • 正篇116巻『闘鬼』2007年10月15日
  • 正篇117巻『暁の脱出』2007年11月15日
  • 正篇118巻『クリスタルの再会』2007年12月15日 

あらすじ

悲劇的な事件の後、傷心のマリウスが訪れたのは、クムの誇る快楽の都タイス。中原最大の歓楽街を擁するタイスで、マリウスはロイチョイのサリア遊郭に逗留することになる。折しも、この地では若い遊女見習いたちの失踪が相次いでいた。背後には闇の組織が蠢いている。マリウスは意図せず、騒動に巻き込まれていくのだが……。

ここからネタバレ(グインサーガ本編のネタバレを含む)

時系列的には9~10巻の後くらい?

『サリア遊郭の聖女』はパロの王子マリウスを主人公とした外伝作品。王子といっても、マリウスは妾腹の身で王位継承順はかなり下。超絶出来のいい兄(アルド・ナリス)に強い劣等感を抱いており、王子の身分を捨てて出奔、現在は吟遊詩人として生きている人物。

作品の時系列的には、正篇10巻『死の婚礼』と、外伝2巻『イリスの石』の間くらいの時間軸の物語になるだろうか。モンゴールのミアイル公子暗殺事件に巻き込まれ、いったん本編から消えたマリウスが、グインと出会う以前に体験したエピソードが『サリア遊郭の聖女』となる。

マリウスはその後、正篇110巻の『快楽の都』あたりでタイスを再訪している。物語の視点は、再びタイスを訪れたマリウスが、当時を回想する形で描かれている。

事件の謎を解くカギはマリウスの幼少期に?

中原最大の遊郭を抱える、クムの快楽の都タイスが今回の舞台。タイスのロイチョイ地区、特に正統派の遊郭として古い歴史を持つ西の廓を中心に物語は展開されていく。次々と消えていく、若い遊女見習いの少女たち。事件の背景には、闇の遊郭組織(闇妓楼)が暗躍している。タイス名物の地下水路の話も出てきたので、いずれは、タイス伯タイ・ソンとか、マーロールなどの、正篇に出てきたキャラクターが話に絡んでくるのではないかと予想。

今回のヒロインは、タイスきっての人気遊女ジャスミン・リー。彼女はヨウィスの民の血を引くエキゾチックな顔立ちの美女で、実は、パロのアムブラ地区出身という設定。ジャスミンの両親はマリウスの父親、アルシスに仕えていたみたい。

マリウスの母親であった、エリサは、幼いマリウスを残して何故死んだのか、ってあたりも、物語の核心に迫る謎として今後明らかにされていきそう。

円城寺忍は、前作の『黄金の盾』でもクムを舞台とした外伝作品を書いていた。よほどクムの設定が好きなのか?『黄金の盾』は正篇の隙間を綺麗に埋めた良作品だったので、『サリア遊郭の聖女』にも期待したいところ。続きがもう来月には読めるのは嬉しいね。

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