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『エヴァンゲリオンの夢』碩学・大瀧啓裕のガチ考察本

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あの大瀧先生がTV版「エヴァ」をガチで解読

テレビ版の『新世紀エヴァンゲリオン』が放映されていたのは1995年~96年にかけてのこと。なんともかれこれ四半世紀も前のことになる。

そして、『エヴァンゲリオンの夢』は2000年に刊行されている。『新世紀エヴァンゲリオン』はテレビ版放映時から大反響を呼び、さまざまな考察本が刊行されたが、『エヴァンゲリオンの夢』は驚くべきことに5年も前に放映されたアニメ作品に関しての評論本なのである。もちろんこの時点では「新劇場版」は影も形もない。

本書の頁数は400ページを越え、価格は3,400円。しかも版元は東京創元社なんてまるでアニメとは畑違いの出版社である。わざわざこのタイミングになって出してくる辺りにそんじょそこらの、ブーム便乗にした謎本群との気合いの違いを感じざるを得ない。

エヴァンゲリオンの夢 使徒進化論の幻影

筆者の大瀧啓裕(おおたきけいすけ)は1952年生まれ。個人的には「ラヴクラフト全集」の印象が強すぎて、怪奇系の翻訳家という印象が強いのだけれど、プロフィールを見てみるともともとSFガチ勢の方なのね。これはメッチャ期待できそうと、気合を入れて読んでみた次第。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

とにかく「エヴァンゲリオン」が好き!という方。マニア中のマニアが書いた「エヴァンゲリオン」の考察本を読んでみたい方。「新劇」が終わる前に、テレビ版をもう一度おさらいしておこう!と思った方におススメ!

内容はこんな感じ

日本アニメーション史に残る名作にして怪作『新世紀エヴァンゲリオン』。数多くのファンを魅了しながらも、難解な謎を残して完結したこの作品に、碩学大瀧啓裕が挑む。二年余りの歳月をかけ、二段組み400頁強を費やして徹底的に読み解かれたエヴァンゲリオンの真実の姿とは。

ココからネタバレ

目から鱗が落ちまくる

オープニングについての解題からして既に圧巻で目から鱗が落ちるというより、鱗があったこと自体ここで初めて知らされるありさまでほとほと感服させられてしまう。この調子でテレビ版の1話~最終話、映画版の25、26話について微に入り細をうがった怒濤の分析が続いていくのである。

これほどの評論を受け止めるにはこちらもそれなりの礼儀を持ってせねばなるまい(笑)。ということで、初読時は、TV版を全話見直しながら、いきつ戻りつしながら読んでいたので、読了まで1ヶ月もかかってしまった。

なんだかわかったような気にさせられる

零号機コア=赤城ナオコ説や、レイは全て同一人物説、トリックスター葛城ミサト説、使徒は全てカヲルに収斂する説等々、導きだされる結論の数々にただただ圧倒させられるのでした。あのわけわかんなかった映画版もなんだか判ったような気になってきたぞ。

決して皮相的な捉えかたをせず、細かい描写の数々に徹底的にこだわって検証していく真摯な取り組みかたが印象的でとても好感が持てた。これも有り得べき解釈の一つに過ぎない訳だけど、かなり完成度の高い解答で大満足なのであった。

大瀧先生に「新劇」の考察も書いて欲しいけど、さすがにもう無理かな……。

エヴァンゲリオンの夢―使徒進化論の幻影

エヴァンゲリオンの夢―使徒進化論の幻影