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『閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム』木元哉多 沙羅ちゃんの日常が明らかに!

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検索経由でいらした皆さま、テレビドラマ版の原作となった、小説パートのネタバレ感想はこちらにあります!

「閻魔堂沙羅の推理奇譚」シリーズの四作目

「閻魔堂沙羅の推理奇譚」シリーズの全巻読破企画の四回目をお届けしたい。

本作は2018年刊行作品。木元哉多(きもとかなた)の四作目の作品である。この作家のデビュー年は2018年なので、なんとこの時点で四冊目の著作!いやはやなんとも、凄まじい刊行ペースである。

閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム (講談社タイガ)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

閻魔堂沙羅ちゃんが普段は何をしているか気になる方、過去三作に登場したキャラクターがその後どうなっているのか知りたい方、自分で考えて本格ミステリの謎を解きたい方におススメ。

あらすじ

それは一枚の写真から始まった。担任教師の秘密を知ってしまった少女は、思わぬ事件に巻き込まれ無惨な死を遂げる。彼女を脅迫し、そして殺害したのは誰なのか?元ヤクザの男に告げられた、かつて所属していた組織の危機。抗争に巻き込まれていく男だったが、殺人者の魔の手が迫る。事件の真相は何処にあるのか。

ココからネタバレ

「閻魔堂沙羅の日常」付き!

シリーズ四冊目は、手に取ってみるとわかるのだが少しページが少ない。それもそのはず、メインとなる「死者復活・謎解き推理ゲーム」が、今回は二編しか収録されていないのである。さすがに四作目ともなるとちょっと息切れしてきたか?

その代わりと言っては何だが、オマケ的なエピソードとして、掌編作の「閻魔堂沙羅の日常」が収録されている。

では、例によって各編ごとにコメントしていこう。

向井由芽 13歳 中学生 死因・撲殺

売れない画家(というかほぼニート)のダメ男を父親に持ち、耐えかねた母親は失踪。わりと散々な境遇の中でたくましく生きる中学生、向井由芽(むかいゆめ)が主人公である。担任と駒野と、同級生の母親江藤未羽。この二人の不倫関係を知ってしまったところから事件は始まる。

本作のサブタイトル「点と線の推理ゲーム」はこのエピソードを指している。一見関係ないように思える事実を繋ぎ合わせて、その関係性を見出していく。そこに事件を解くカギがあるという趣向だ。

今回の容疑者リストはこちら。

  • 堀之内亜美(ほりのうちあみ):由芽の小学校以来の友人。優等生
  • 栗竹七菜香(くりたけななか):由芽の小学校以来の友人。目立ちたがり屋
  • 徳永晃平(とくながこうへい):由芽の同級生。学校一のイケメン
  • 丸美麗奈(まるみれな):由芽の同級生。学校一の美少女
  • 向井鉄矢(むかいてつや):由芽の父親
  • 駒野秀明(こまのひであき):由芽の担任教師
  • 江藤聖也(えとうせいや):由芽の同級生。由芽の言動がきっかけで不登校に
  • 江藤未羽(えとうみはね):聖也の母親。駒野の不倫相手
  • 江藤恒男(えとうつねお):聖也の父親。弁護士。悪い噂が絶えない

脅迫者には気付けるかもしれないが、殺人者を当てるのはちょっと難易度高そう。由芽の高身長設定に気付けるかどうか。気付けたとしても殺害方法に結び付けられるかどうか。このあたり、発送の飛躍が必要でひらめきがないと厳しいかも(わからなかったわたくし)。

ちなみに、このエピソードは「閻魔堂沙羅の挑戦状!」として、Web上でのキャンペーンに使われていた(既に終了)。本書の巻末に、結果発表と解答分布が掲載されている。殺人者の正答率は7.6%とかなり低め。やっぱりこれ難しいよね。

閻魔堂沙羅の日常

シリーズ初の外伝的な作品。というか、真の主役が沙羅であることを考えると、ついに沙羅メインのエピソードが登場!といったところだろうか。20頁程の掌編である。

ここで閻魔大王家のメンバーを簡単にご紹介。

  • 閻魔大王:虚弱体質。すぐに病気になる
  • 母:カリスマ主婦。体脂肪率10%未満の細見長身スタイル。副業でモデルも
  • 寅丸:沙羅の兄。父に似て虚弱体質。試験に三年連続で落ちている

閻魔大王も兄の寅丸もダメキャラ過ぎて、この家の男系はヘタレっぽい。

また、過去三作に登場したキャラクターの「その後」について少しだけ言及されているので、併せてチェックしておこう。

  • 緒方智子:志望校に合格。環境活動家を目指して猛勉強中
  • 浜本尚太:平社員のまま。天野京香に告白できておらず停滞中
  • 君嶋世志輝:探偵なるべく大学受験を試みるも全滅し浪人中
  • 武部建二:捜査一課に引き抜かれ活躍中
  • 浦田俊矢:まさかの陶芸家に!
  • 外園聖蘭:ミミとコンビを組んだお笑いコンビ「ささくらベイビーズ」でブレイク中
  • 仙波虎:予後一年を経過しても存命
  • 遠山賢斗:元気に学校に行っている
  • 土田裕太:大学には合格した者の、人とは関わらない生活を続けている

久保達樹 47歳 元ヤクザ 死因・射殺

最終エピソードは殺伐としたヤクザ社会を舞台とした作品である。主人公の久保達樹(くぼたつき)は元ヤクザで、現在はうどん店を経営。妻には先立たれ、娘と一人暮らし。ヤクザ稼業からは足を洗ったものの、かつての所属組織若槻組が存亡の危機に陥りう、対立組織との抗争に巻き込まれていく。

容疑者は以下の皆さん。

  • 真島一久(ましまかずひさ):元ボクサー。若月組の武闘派
  • 宇田川雅幸(うたがわまさゆき):若月組の金庫番
  • 久保さとみ(くぼさとみ):久保の娘。高校一年生
  • 阿隈倫彰(あくまのりあき):若月組の対立組織、阿隈組の組長
  • 安斎清隆(あんざいきよたか):元傭兵。阿隈組のヒットマン
  • 瀬戸吾郎(せとごろう):暴力団担当の刑事

デザートイーグルがどう使われたかを考えれば、比較的容易に結論にたどり着きそうな気がする。ただ、娘に関する小ネタ(小豆、指揮、彼氏、アメリカ留学)にかなりの頁数が割かれていて、こちらが気になってしまって真相が読み切れなかった。これはミスリード狙ってたのかな。

二作+αなのでやや物足りない

四作目である今回は、メインエピソードが二編のみとややボリューム少な目。おまけエピソードの「閻魔堂沙羅の日常」がついてくるとはいえ、少々物足りない感じは否めない。第一巻では四編収録してたからなあ。五作目は、再び三編収録に戻るようなのでそちらに期待しよう。

「閻魔堂沙羅の推理奇譚」シリーズの感想はこちらから!

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