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『閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室』木元哉多 めんどくさい男たちVS沙羅ちゃん


 「閻魔堂沙羅の推理奇譚」シリーズの二作目

2018年刊行作品。先日紹介した木元哉多(きもとかなた)による『閻魔堂沙羅の推理奇譚』シリーズの第二作である。

閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 (講談社タイガ)

あらすじ

殺人事件の捜査中、事件の核心に迫る寸前に刺殺された刑事。ゆすり屋稼業で荒稼ぎした男の突然死。かつての甲子園のヒーローも、今では新進気鋭の若手社長。そんな彼を襲った突然の死。今日も「閻魔堂」にはさまざまな死者が訪れる。閻魔大王の娘、沙羅が示す唯一の蘇りのチャンス「死者復活・謎解き推理ゲーム」。果たして彼らは、見事、現世への生き返りを果たすことが出来るのか!

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

ライトなユーモアミステリを読んでみたい方、本格ミステリ小説の謎解きに挑戦してみたい方、ドSのヒロインが好きな方、隙間時間にサクッと読めるミステリを探している方におススメ。

わずか二か月で続篇が登場!

第一作にして、第55回メフィスト賞受賞作の『閻魔堂沙羅の推理奇譚』は2018年3月の刊行であった。そして、本日ご紹介するシリーズ二作目『閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室』は、なんと二か月後の2018年5月に登場している。続篇出るの早っ!事前に仕込んでいないと、これほどまでのスピード刊行は出来ないと思うので、相応の書き溜めストックが元々あったのかな。驚くべき速さである。

ここからネタバレ

「死者復活・謎解き推理ゲーム」に面倒くさい男三人が挑む

本シリーズの肝となるのは、閻魔大王の娘、沙羅ちゃんとの「死者復活・謎解き推理ゲーム」だ。自分を殺した犯人を当てることが出来たら現世に甦ることできる!今回は三人の死者がこのゲームに挑戦する。

前作までは比較的、素直で善良な人々を主人公としていたが、今回はどちらかと言うと癖のある人物、狷介で面倒くさいキャラクターばかりが登場する。趣向としてはなかなかに面白い。

では、以下、簡単に各編をコメントしていこう。

武部健二 43歳 刑事 死因・刺殺

主人公を務める武部健二(たけべけんじ)は刑事としては優秀だが、躊躇いなく暴力を振るえるタイプ。家族へのDVが祟って離婚。妻子とは別れて暮らしている。

刑事としての善行はそれなりに積んでいるものの、マイナス面も多く、沙羅ちゃん的には「じゃあ、地獄行きで」と即断出来るレベルの人間性。恨んでいる相手には事欠かなそうな人物だが、果たして犯人は誰なのか。

容疑者の皆さんは以下の通り。

  • 森野智也(もりのともや):戸塚署の新人刑事
  • 須崎昭夫(すざきあきお):戸塚署の刑事課長
  • 井ノ原卓馬(いのはらたくま):チンピラ
  • 玉橋由季菜(たまはしゆきな):看護師。事件の容疑者
  • 清水麻帆(しみずまほ):OL。事件の容疑者
  • 芳根美加(よしねみか):大学生。事件の容疑者

読者目線だと、他に怪しい人間が居ないのでわかりやすいかな。冒頭に「毒がない」人物として評していた人物が実は……。という布石も打ってあるし。

地獄行きでもおかしくなかった武部が臨死体験を経ることで、少しだけ家族に優しく出来るようになった。ちょっといい感じで終わるのは好印象。

池谷修 30歳 ゆすり屋 死因・?

池谷修(いけたにおさむ)は、本シリーズ初の現役犯罪者主人公。小学校時代、同級生女子の縦笛を舐めていた程のキモ男で、沙羅ちゃんの判定は余裕の地獄行き。ゆすり屋稼業で生きてきただけに、弁舌は達者。

登場人物は以下の通り

  • 阿賀里勉(あがりつとむ):池谷の相棒
  • 中岡芽以(なかおかめい):大学生。阿賀里の交際相手
  • 野間口(のまぐち):会社社長。池谷のゆすりの相手

今回は登場人物が限られているので犯人は明確。故に、このエピソードでは犯人ではなく「死因」を当てる内容になっている。

ヒントはふんだんに提示されているので、難易度は低め。せっかく復活出来たのに、ネコを人質にしている時点で、もうだダメだこいつ状態だよ。二度目の閻魔堂を行きを果たすことになる。沙羅ちゃんのパパ、閻魔大王はここで初登場。自業自得とはいえこの判決は怖い。

浦田俊矢 34歳 会社社長 死因・撲殺

最後に登場するのは浦田俊矢(うらたとしや)。夏の甲子園準優勝投手。プロ入りするも故障続きで、日の目を見ることなく引退。その後、起業してスポーツジム経営に成功。自分にも他人も厳しいタイプで実力至上主義者である。

容疑者の皆さんは以下の通り。

  • 日比野剛(ひびのたけし):野球部時代はキャッチャー。現在は焼肉店経営
  • 新垣淳一(あらがきじゅんいち):野球部時代はファースト。作家志望
  • 目黒風太(めぐろふうた):野球部時代の後輩
  • 杉原雅代(すぎはらまさよ):野球部時代のマネージャ。浦田の元彼女

成功者である浦田に対して、残りの四人はうだつの上がらない日々を過ごしている。浦田の死に際して、結果的に密室となってしまった犯行現場。犯人は、いかにして密室を作り上げたのか。

サブタイトルに「負け犬たちの密室」とあるが、この三編目のエピソードを指しているものと思われる。それだけに難易度は群を抜いて高く、これは全然わからなかった。ミステリの素養ないのに、これが解けるなんて浦田は凄すぎる。

バッドエンドも出てきて幅が広がる

前作は全員チャレンジ成功の「いい話」集であったのに対して、今回はとうとう失敗する人間が出てきた。「死者復活・謎解き推理ゲーム」はシステムとしては完成されている分、物語のバリエーションを作っていくのが大変そう。それだけに物語の幅を広げるため、これからもバッドエンドはどんどん出てきそうだね。

シリーズ一作目『閻魔堂沙羅の推理奇譚』の感想はこちらからどうぞ。

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