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『ほねがらみ』芦花公園 カクヨム発で書籍化されたホラー小説


芦花公園の第一作

2021年刊行作品。作者の芦花公園(ろかこうえん)は生年不明の覆面作家。『ほねがらみ』がデビュー作となる。

ほねがらみ (幻冬舎単行本)

もともとは小説投稿サイト、カクヨムで本作は書かれていた(現在は第一章部分のみが試し読みとして公開されている)。

芦花公園の第二作としては『異端の祝祭』が角川ホラー文庫より上梓されている。

ちなみに京王線沿線の民であればご存じかと思うが、「芦花公園」は実在する駅名である。作者の方は近隣に住まわれているのかな?作家徳富蘆花(とくとみろか)の住居である蘆花恒春園が立地することにちなんだ命名。

好書好日にインタビュー記事があったのでこちらもリンク。

ただし、後半はネタバレ記事なので注意!

ダ・ヴィンチニュースにも記事があった。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

ネット系の怪談話がお好きな方。ひたひたと身の回りに迫ってくる系の恐怖がお好きな方。理不尽な怪異。民俗、伝奇的なネタ。宗教要素などなど、さまざまな「怖い」要素がミックスされたホラー作品を読んでみたい方におススメ。

あらすじ

大学病院に勤務する医師の「私」は、趣味で怪談の収集を行っている。SNS上の知人から寄せられたネット怪談。先輩の医師による症例研究資料。地方に移住した母子の記録。呪われた地。手足をもがれた「達磨」。蛇神をめぐる伝承。そして浮かび上がってくる橘家の怪異。事件に深入りし後戻りできないところまで追い詰められてしまった「私」の末路は……。

ここからネタバレ

ひとつの怪異を他視点で見る

本作でまず注目したいのは、冒頭の「はじめに」の部分だ。この章では、作者がホラー小説を書く意図、姿勢、決意表明的なものが示されている。まずこちらのテキストを引用させていただこう。

これが「ひとつの映画をバラバラに見せられているような感覚」である。

ネットから紙の本になっても変わらない。

私は、読者の皆さんとこの面白い感覚を共有したいのである。

『ほねがらみ』p16 はじめに より

ひとつの出来事を他視点で見る。これが本作『ほねがらみ』のキーワードとなっている。知人から寄せられたネット怪談や、精神疾患を持った患者の報告書、突然送りつけられてきた怪文書。一見するとバラバラの出来事を綴っているかに思えたテキストに、実はとある共通点が発見される。

点と点がつながり線になる。線と線はつながって、やがて面となる。新たなエピソードが登場するたびに、物語の解像度が上がり、怪異の骨格が明らかとなってくる。この流れが実に怖い。

「ほねがらみ」の意味

続いてタイトルの「ほねがらみ」の意味について確認しておこう。

  1. 梅毒や結核が全身に及び、骨がうずくようになること。また、その症状。骨うずき。
  2. 悪い状態から容易に抜け出せないこと。

骨絡みとは - コトバンクより

「骨絡み」には二つの意味があることがわかる。本作ではどちらの意味も含んでいるのだが、どちらかと言うと後者の要素の方が重いかな。この物語では安易な気持ちから怪談を収集し、結果として怪異に捕らわれ、闇の世界へと堕ちていく「私」の姿が描かれる。怪異の持つ負の引力に惹かれ、逃げ出したくても逃げられなくなっていく「私」は、まさに「ほねがらみ」の状態にハマってしまったと言える。ゴリゴリに削られていく「私」のメンタル。終盤のSAN値超えてからの描写がイイ!

日ユ同祖論にまで話が膨らむ

主人公の「私」は次第に橘家の怪異「なかし」の真相に迫っていく。手足のない人体。蛇への信仰。隠れキリシタンの伝承。これらは最終的に日ユ同祖論にまで話が広がっていく。

日ユ同祖論とは、日本人の祖先は、中東からやってきたユダヤ人の末裔であるとするもの。ネタ的に扱われることが多く、トンデモ系の領域だが、ファンタジーや伝奇小説の世界では重宝される説だ。

とはいえ、遠いユダヤの地からの伝承が、日本に入ってさまざまな要素と習合し受容されてきたとする展開や、少々強引な気もするけど、ノリとして好み。これだけはっちゃけてくれると楽しいやね。

矢樹純「べらの社」との類似に関する問題

なお『ほねがらみ』については、矢樹純(やぎじゅん)作「べらの社」との類似について指摘がなされている。関連記事はこちら。

作者の芦花公園からは《気づかないうちに影響を受けていたようです》との見解が示されたとのこと。結果、この指摘を受け『ほねがらみ』の電子書籍版の表記は、一部修正が入っている模様。紙の書籍の方も、再版がかかるようであれば、修正が入るかもしれない。

作者は怪談の収集を趣味としている方のようなので、さまざまな怪談情報に触れていく中で情報が混ざってしまい、結果としてこういう事態になってしまったのか?なんとも判断はつかないところ。ただ、幻冬舎のこちらの告知はきちんと理由を説明していなくて、もやもやした部分が残るかなあ。『ほねがらみ』自体は良作だけに惜しまれる。

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