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『ロミオとロミオは永遠に』恩田陸 郷愁と狂騒の20世紀に捧げるオマージュ作品

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恩田陸のディストピア学園モノ

2002年刊行作品。早川書房「SFマガジン」の1999年3月号から2000年6月号にかけて掲載されたものを大幅に加筆修正。ハヤカワSFシリーズJコレクションの一冊として刊行されている。カバーイラストはおがわさとし。

ハヤカワ文庫版は20006年に刊行。文庫化に際して上下巻に分冊されている。イラストは単行本版の方が好みだったなあ。

ロミオとロミオは永遠に〈上〉 (ハヤカワ文庫JA) ロミオとロミオは永遠に〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

近未来、文明崩壊後の世界で繰り広げられるハチャメチャな学園モノを読んでみたい方。少しぶっ飛んだテイストの恩田陸作品を読んでみたい方。学園伝奇系の作品が好きな方。中高年層向けのサブカルネタがふんだんに盛り込まれた作品を楽しみたい方におススメ。

あらすじ

地球環境の汚染が進み、産業廃棄物処理のため日本人だけが取り残された世界。ここで生き抜くためのベストな方法は、エリート養成校大東京学園を総代で卒業すること。過酷な選抜試験をくぐり抜け、新入生として学園へ足を踏み入れたアキラとシゲルだったが、想像を絶するスパルタ教育がそこで待ちかまえていた。異様ともいえる学園生活の中で、二人は学園の秘密に気付くのだが……。

ここからネタバレ

中高年層歓喜、オールドネタが満載

上下二段組で総計500頁弱という、ものすごい分厚さに圧倒されるのだが、読み始めているとやはり恩田作品。テンポ良く話が進むのでとても読みやすい。勢いに乗ってしまえばあっという間に読めてしまうだろう。10代以下置いてけぼりのサブカルチャー描写も、ストライクゾーンど真ん中世代なので素直に楽しませてもらった。

ちょっと懐かしい学園伝奇スタイル

恩田作品的には『ドミノ』が一番近いだろうか。ノリと勢いで荒唐無稽が現実をねじ伏せていくタイプ。今回の作品世界はかつてなくハードな設定である筈なのだがシリアス度は低い。ジャンルを無理矢理分類するならば、昔風?に言うところの学園伝奇モノか。となると、平井和正や夢枕獏、菊地秀行あたりを想起せずにはいられないところだが、迫真のバイオレンスもお色気シーンも本作には無縁である。

かくも軽い仕上がりになるのはこの作家故なのか。せめて勧善懲悪は徹底して欲しかったところ。タダノにしてもリュウガサキにしてもあれで終わりでは納得がいかない。カタルシスの乏しさはいかんともしがたいものがあった。やっぱりラスボスが欲しかったな。

やはり恩田陸はサブカル好きではあるけど、ヲタでは無いのだなと寂しく読み返してみた秋の夜。もちろんその方が一般受けするからいいんだろうけど、突っ込みが甘いよと嘆きたくなることもしばしば。もっとハチャメチャに突き抜けて欲しかった気はする。

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