ネコショカ

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真梨幸子『孤虫症』イヤミスの旗手のデビュー作


メフィスト賞受賞作を地道に紹介していくシリーズも今回で7回目。目指すは全作紹介!だが、現時点でも58作もあるので道は遠い(だいたい未読作品が半分近くある)。

真梨幸子のデビュー作

2005年刊行。第32回メフィスト賞受賞作品。いまや、イヤミスの旗手として名を馳せる、真梨幸子(ゆきこ)の最初の作品が本作である。

孤虫症

初出は携帯サイト「THE NEWS」の小説コーナー('05年1月~3月)。刊行されているのが2005年4月なので上記の携帯サイトでの掲載と、講談社への応募との前後関係はよくわからない。

文庫版は2008年に登場している。

孤虫症 (講談社文庫)

孤虫症 (講談社文庫)

 

 

あらすじ

主婦長谷部麻美の人生は平凡ながらも満足の出来るものの筈だった。しかし彼女は焦燥に駆られるかのように複数の男たちの体を貪りつつづける。下半身に感じる執拗な掻痒感は性病によるものなのか。そして男の一人が変死を遂げる。全身をブルーベリー状の出来物で覆われた無惨な最後だった。麻美は次第に精神を狂気に蝕まれていく。

最初期からのイヤミスの書き手

おさらいとして、イヤミスとは何なのかを確認しておこう。

イヤミス
読むと嫌な気分になるミステリー、後味の悪いミステリーのこと。代表的な作家に湊かなえ、沼田まほかる、真梨幸子、秋吉理香子、歌野晶午らがいる。イヤミスという言葉を最初に使ったのは、霜月蒼とされ、『本の雑誌』2007年1月号で「このイヤミスに震えろ!」というタイトルの連載がスタートしている。

推理小説 - Wikipedia より

湊かなえの登場あたりから、嫌ーな感じのミステリに対して、イヤミスという概念があてはめられるようになった印象があるのだが、真梨幸子のデビューはそれよりも三年早い。もっとも初期の頃から、このジャンルの作品を意識して書いてきている作家なのである。

デビュー作である『孤虫症』は、人間心理のどす黒さ、展開の救われなさに加えて、圧倒的な生理的嫌悪感まで加味された、きわめて濃度の高いイヤミスである。

グロ描写に次ぐグロ描写

ごくフツウの主婦が性感染症により特殊な寄生虫に蝕まれ、肉体的にも精神的にも、社会的にも壊れていく物語。焦燥感たっぷり。終始追い詰められているかのような、ねっとりとした文体が特徴的。

寄生虫描写のエグさには命を賭けていて、この気持ち悪さは特筆に値する。カバーデザインまで徹底していて、寄生虫に冒された人皮を想起させるような「ツブツブ」がカバー上に表現されているのだ。内容的には貴志祐介の『天使の囀り』に比較的近い読後感か。基本はバイオホラー。だだ、ミステリとしての仕掛けも施されていて、この点は正直あまり上手く機能しているとは思えない。でも、その志は買いたいところ。

扱っているネタがネタなので、寄生虫描写がダメな方には本当にお勧めしないが、グイグイ読ませる筆はこびは魅力。現在の活躍もうなずけるというものである。

孤虫症

孤虫症