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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

2018年に読んで面白かったマンガ12選

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年末なのでたまには趣向を変えて企画ものを。

わたしは基本的には「小説読み」なのだが、マンガもちょっとだけ嗜むタイプ。ただ、アンテナ感度が低いので有名作品の後追いがメインである。パッと見、新鮮味のない顔ぶれかもしれないけど、そのあたりはご容赦いただければと。

2018年に出たマンガではなく、「2018年に読んだマンガ」が対象ね。特に順番とかは無しのテーマ別の順不同。ネタバレもガンガンしているので、その辺は自己責任でお願いいたします。

お久しぶりでした部門

長く生きているとたまには良いことがあるもので、久しぶりに新刊がでた長期シリーズ二作をチョイスしてみたよ。

るろうに剣心 明治剣客浪漫譚 北海道編(1)

るろうに剣心 ─ 明治剣客浪漫譚 北海道編 ─ 1 (ジャンプコミックス)

るろうに剣心 ─ 明治剣客浪漫譚 北海道編 ─ 1 (ジャンプコミックス)

 

20年ぶりの続編。作者にいろいろあったので、ホントに出るかどうか不安だったが、ともかく刊行されて一安心。

この作品の「その後」を描いた作品としてはOVA版の「星霜編」があるのだけれと、星霜というよりは「凄愴編」といった感じで、人斬り時代の剣心の罪と罰を残酷なまでに突き詰めた、ファンとしては受け入れがたい内容だっただけに、この世界線が改めて否定されたようで嬉しい。 (ちなみに同じOVAでも「追憶編」は超名作なので未見の人は絶対見るべき!)

北海道編は、30代も半ばとなり(外見ほとんど変わらんが)、剣士としての衰えを自覚し始めた剣心が、かつての因縁に立ち向かうというお話。懐かしキャラの登場、お馴染みの必殺技、外連味のある敵と、かつてこのシリーズを読んできた人間としては、あの時代の「るろうに剣心」が帰ってきた感があって楽しい。

平成の終わりにあ~るが帰ってきた!『究極超人あ~る』(10)

究極超人あ~る10通常版 (ビッグコミックススペシャル)

究極超人あ~る10通常版 (ビッグコミックススペシャル)

 

31年ぶり、まさかの続巻。オッサン読者は超歓喜ですわ。前の第9巻が出たのは1987(昭和62)年である!

1980年代の怠惰で生産性ゼロな高校生活をダラダラと描く。これ、文化部モノのはしりだったよね。烏坂先輩が相変わらず酷い人で、他のOBの人たちもホントにダメ人間で、西園寺先輩も鰯水クンも健在で、ただただ懐かしい。うちの高校もなんだかわかんない部活がいくつもあって、放課後の文化部棟はカオスだった。

これだけの歳月を経て、商業作家として未だに最前線バリバリのゆうきまさみも凄い。

大長編作品ならではの心に残る中間巻

長い長い作品を長年読んでいると、これまでずっと読んできて良かったと胸が熱くなる巻、このエピソードが読みたかったんだよ!と心待ちにしてきた巻がある。そんな作品の中から二作をご紹介。

インターミッション巻の魅力『あさひなぐ』(26)

あさひなぐ (26) (ビッグコミックス)

あさひなぐ (26) (ビッグコミックス)

 

あえて26巻を推す。

ここぞという試合や大会前のインターミッション回が好きだ。『タッチ』の須見工決勝戦前とか(←例が古すぎる)、『スラムダンク』の山王戦前夜とか(あ、これも古い)、『ダイヤのA』の稲実戦前夜とか、これだけでごはん何杯でも食べられる。

過酷な練習、積み上げてきた試練と悔しさ。最後の大会に賭ける上級生たちの想い。インターミッション回が面白くなるのは、長く長く積み上げてきた長編作品だからこそだと思っている。

あさひなぐは2011年からビッグコミックスピリッツに連載されている薙刀マンガ。本巻は、主人公二年生時のインターハイ本選直前のエピソードを収録した「決戦前夜」巻である。シリーズの集大成となりそうな大会を前にした、各キャラクターたちの成長してきた感が半端無くてオッサン的に感涙を禁じ得ない。こういう話好きなんだよなあ。

戸次川の合戦、決着巻『センゴク権兵衛』(10)

センゴク権兵衛(10) (ヤングマガジンコミックス)

センゴク権兵衛(10) (ヤングマガジンコミックス)

 

仙石秀久と言えば、戸次川のボロ負けである。単に自軍だけで負けたわけでなくて、秀吉から預かった優秀な与力武将を多数死なせており、その中に長宗我部家、期待のエース信親が含まれていたから、戦国ファンの怨嗟の声を一身に受けがちな武将でもある。

この敗戦で仙石家は改易となる。この時期の秀吉のテンションを考えると、斬首にされてもおかしくない程度のボロ負けだが、辛うじて命は救われる。但し、これまでに戦国武将として築いてきたキャリア全てを失うことになる。

しかし、戸次川以外の千石秀久ってほんとど知られてないんじゃないか?秀吉の子飼いのわりには、大河ドラマで出てくることも少ないし、戦国系のマンガにもあんまり登場しない。

宮下秀樹は戸次川以前の仙石秀久の生涯を少年時代から、なんと単行本54巻分かけて描いてきた(『センゴク』15巻、『センゴク天正記』15巻、『センゴク一統記』15巻、『センゴク権兵衛』既刊9巻まで)。

そもそもわたしがこの作品を読み始めたのは、戸次川の戦いでどうして仙石秀久は失敗したのか、それを知りたかったためである。結局のところ「バカだったから」ということで済みそうなのだが、54巻かけて愛すべき戦バカぶりを描いてきてくれただけに、納得感のある決着であった。関係者はたまったもんじゃないだろうけどね。

「この先に行ける人、残る人」部門

地方特有の閉塞的環境とか、特定年代ならでは出口が見えない感じとか。そこで留まることを強いられている人たちにも二種類が存在する。その先へ行ける人々と、それでもそこに留まる人々だ。皆を残して先に行くのか?ここでの生活を生きていくのか。以下の三作は、いずれも根底にこの問を抱えている。

砂をかんだような読後感『さよならガールフレンド』

さよならガールフレンド (フィールコミックス FCswing)

さよならガールフレンド (フィールコミックス FCswing)

 

高野雀の初単行本作品。単巻なのでサクッと読める。

地方の小さな街で暮らす女子高生と、頼まれれば誰とでも寝てしまう「ビッチ」先輩との奇妙な友情を描いた物語。同様に地方都市の閉塞感を描いた、山内マリ子の『ここは退屈迎えに来て』系の作品が好きな人なら楽しめると思う。

閉塞感のある日常から抜け出して、此処ではない何処かに行ける者と、残される者のお話。去る者の残酷さとうしろめたさ、残る者の諦観が生々しくて、ざらりとした砂を噛んだような読後感が魅力の作品。

友達として会えるのは月曜日の夜だけ『月曜日の友達』

月曜日の友達 1 (ビッグコミックス)

月曜日の友達 1 (ビッグコミックス)

 

田舎の中学校の物語。才色兼備のよくできた姉にコンプレックスを感じる、まだコドモらしさが残る少女水谷茜。「超能力が使える!」と豪語する男子、月野透と、月曜日の夜にだけ会うようになる。

人生に先が見えず閉塞感を抱えて生きる思春期の二人。それでも、この先どこまでも行けるんだと思っていて、実際に行けてしまいそうな、活力のある主人公と、ずっとこの土地で暮らしていくんだろうなと何処かで諦めている、家庭に問題を持つ月野。

月曜日の夜に起きた奇跡は、子供でもない大人でもない、この年代の二人にしか訪れることがなかった祝福なのだと思う。ただ、ひととき心を通い合わせてもこの先、ふたりの人生の軌跡が交わることはないような気がして、ただそれが切ない。

残った側の物語『我らコンタクティ』

我らコンタクティ (アフタヌーンKC)

我らコンタクティ (アフタヌーンKC)

 

本作は、此処ではない何処かに行けなかった側の物語。

個人でのロケットの開発に打ち込むかずき。さえないOLのカナエ。もう若いとも言えない年になろうとして居て、 楽しくもない仕事、変わらない毎日。それでもこの場所で生きていくという事。 

何もないと思えた人生にも、潤いを与えることは出来る。そのきっかけは、ごくごく身近に存在していたりする。そしてなにがしかの奇跡が起きたとしても、平穏な人生はそれからもずっとずっと続いていく。でもそれも悪くないよねと思わせてくれる一作。

なんで今まで読んでなかったの?納得の名作部門

有名作過ぎて、読むのを敬遠してしまう作品ってないだろうか?話題になる作品には理由がある。多くの方が支持している作品が、ハズレであることはあまりない。以下の三作はそんな名作の皆さん。まだまだ読まずにいる名作がきっとたくさんあるんだと思う。

物語の持つ圧倒的な熱量『左ききのエレン』

原作版 左ききのエレン(1): 横浜のバスキア

原作版 左ききのエレン(1): 横浜のバスキア

 

画面から放出される圧倒的な熱量にひれ伏すべき作品。準備ができるまで待っていたら、チャンスなんて永遠にやってこないんだということを教えてくれる。

人生の僅かな一時期に同じ場所に居合わせたことで、お互いの運命を変えてしまうことになる二人の男女の物語。一人は世界的な天才アーティストに、もう一人はうだつの上がらない広告デザイナーに。二人は恋愛関係にはない。友情とも違う気がする、同志?戦友?この微妙な関係性が面白い。

絵描きを変えたジャンプコミックス版も出ているが断然「原作版」を推す。1巻冒頭のお世辞にも上手いとは言えない絵柄を見て、大丈夫かこの作者!とページをめくるのを辞めてしまわないように!そのうち絵は上手くなる。気にならなくなる!物語の持つ熱量が半端ないので、やがてページをめくる手が止まらなくなる徹夜本である。ちなみにわたしが好きなのは営業の流川クン。

全10巻。全てKindle Unlimted対象作品なのでいますぐ読むべし。

アイドルマンガと侮ってはいけない『AKB49恋愛禁止条例』

AKB49?恋愛禁止条例?(29) (週刊少年マガジンコミックス)

AKB49?恋愛禁止条例?(29) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 片思いの少女の「AKBに入りたい!」という夢を応援するために、女装してオーディションに参加した主人公(♂)が、まかり間違って自分も採用されてしまい、性別を偽ったまま仕方なくアイドル活動をしていくうちに、まんまとハマり、ガチのアイドルを本気で目指していく熱血スポ根成り上がり物語。

実在アイドルの人気に便乗した残念マンガかと思ったら全然違っててガチの名作だった29巻も出てるだけはある。AKB好きならなおさら、知らなくても全く問題なく楽しめる内容。マジで!

会場を満員に!アンチを全員改宗させる!番組視聴率30%突破!なんて感じで、各エピソードごとに判りやすい目標設定があり、少年マンガお約束のコテッコテッの妨害工作が入るのも王道コースである。

改めてこの作品を読んでみると、AKB商法の仕組みの出来の良さに震撼させられる。システムとしてのAKB商法は無味乾燥とした現実に緊張感をもたらし、物語性を可視化、さらに受け手の感情移入の度合いまで高めてくれる最高の仕組みなんだろうね。

この話の凄いところは搾取される側のオタの皆さんを シッカリ描いているばかりか、その情熱を全身全霊を持って肯定してるところ。全編を通しての、最大の泣かせキャラが奥平先生だというのはものすごいコトだと思う!

人生に本当に必要な存在は取り戻すことが出来る『坂道のアポロン』

坂道のアポロン(1) (フラワーコミックスα)

坂道のアポロン(1) (フラワーコミックスα)

 

1960年代の佐世保、都会から来た秀才君と田舎の不良、そしてジャズ。この3つの主題が絶妙なブレンドで提供されている一作。

『このマンガがすごい! 2009』オンナ編1位。第57回小学館漫画賞(一般向け)。アニメ化されて、映画化もされてやっと読んだ。音楽マンガの名作、というかもはや定番ですなー。

終わりの無い音楽が無いように、楽しい時間も永遠には続かない。それでも音楽はまた演奏すればいいし、楽しい時間もまた始めればいい。人生の一時期、たとえ離れてしまったとしても、本当に必要なものは取り返すことが出来る。また会うことが出来る。「もういちど始める」ことの大切さをしみじみと実感させてくれた作品。

個性豊かな玄人たちが織り成す、ギャンブルマンガの名作『哲也 雀聖と呼ばれた男』

哲也?雀聖と呼ばれた男?(41) (週刊少年マガジンコミックス)

哲也?雀聖と呼ばれた男?(41) (週刊少年マガジンコミックス)

 

戦後の復興期を舞台とした麻雀マンガ。阿佐田哲也の「麻雀放浪記」をベースとしているが、マンガ化に当たり大幅に改変されており、ほぼオリジナル作品といってもいい程の魔改造が施されている(褒めてる)。

連載時に読んでいたのだけど、いつの間にかマガジン本誌を読まなくなってしまい、結末を知らずにいた作品だ。マガジンのマンガアプリ(マガポケ)で一年間かけて全話読破。やはり何度読んでも房州さんとの最後の対決はギャンブルマンガ誌に残る名勝負。これシリーズ後半の話かと思ってたら、かなり初期のエピソードだったんだね。

奇人変人てんこもりの凝ったエピソードが毎週続き、よくぞ麻雀ネタでここまで続けられたと感心する。特に、ラストエピソードの二つ手前、神保さん葬式編はずっと読んできたファン向けのサービス企画でギャグ回なのに泣けるほどのクオリティ。最終決着を前にした最後の遊び回で、こういうオールスター的な話が作れるのは凄いと思った。

今年で完結!お疲れ様でした部門

ようやく最終部門。こちらは2018年で完結を迎えた作品だ。

少女たちの復讐譚『辺獄のシュヴェスタ』

辺獄のシュヴェスタ(1) (ビッグコミックス)

辺獄のシュヴェスタ(1) (ビッグコミックス)

  • 作者:竹良実
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/07/10
  • メディア: Kindle版
 

舞台が16世紀の神聖ローマ帝国と言う時点で世界史愛好家的にはハートが震えだす。非道な魔女裁判で養親を殺された孤児エラが、仇である修道院長を討つためにあらゆる苦難を乗り越えた頑張りまくるお話。エラちゃんの目力が凄い!

次から次へとやってくるピンチの連続を、持ち前の機転と勇気、そして次第に育っていく仲間たちとの友情の絆で乗り越えていく展開が熱すぎて、ワクワクがそして最後は涙が止まらない。

最後の第6巻はおいおいどうしちゃいましたか?とその猛烈な展開の速さに、誰もが作品の打ち切りを感じたと思う。最低限の決着はつけてくれたけど、出来ればじっくり巻をかけて堪能したかったのでホントに残念。他社でも、電子出版でもいいから、完全版とかでないかしらん。

ご覧頂きありがとうございました

10作以内に絞ろうと思ってたけど、ちょっと増えてしまった。

ネット時代、アプリ時代に入り未知のマンガ作品は増える一方である。まだまだ知らない名作がたくさんあるんだと思うので、あなたの面白かったマンガ作品、良かったら教えて頂けると嬉しいです!

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