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『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

『銃とチョコレート』乙一のミステリーランド参加作品

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乙一ひさしぶりの新作だった(当時)

2006年刊行作品。2003年に登場した『ZOO』以降、乙一はしばらく新刊が出ない時期があって、本作は三年ぶりの作品だった。

で、久しぶりの新刊は講談社のミステリーランドからの登場である。このシリーズは異常なまでに装丁に手間暇がかかっていることが特徴で、箱装にカラーイラスト。布製の背表紙にタイトルは金押しというこだわりようである。その分お値段もそれなりなのだが、ファン的には満足の一冊と言える。

銃とチョコレート (ミステリーランド)

講談社ノベルス版は2013年に登場。

続いて、講談社文庫版が2016年に登場している。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

チョコレート好きの方。タイトルが気になった方。乙一の書いたジュブナイル小説を読んでみたい方。名探偵VS怪盗モノの作品がお好きな方。講談社のミステリーランド系の作品に興味のある方におススメ。

あらすじ

大富豪からしか盗まない神出鬼没の怪盗GODIVA(ゴディバ)。それを追うのは若き名探偵ロイズ。リンツはこの二人の対決に心躍らせる少年の一人だった。ある日、父の形見の中から奇妙な地図を発見した彼は、それがGODIVAの盗んだ財宝の隠し場所であることを知る。憧れのロイズと共に地図の謎に挑むリンツだったが、それは危険な冒険の始まりだった。

ここからネタバレ

ドゥバイヨルが最高な物語

かつて子どもだったあなたと少年少女のための、という趣旨で書かれた作品にしては、描写がやたらに暴力的なんだけどこれって有りなのか?今時これくらいは普通の小説なら当たり前だけど、建前的にレギュレーションって無いのだろうか。とはいえ、そんなきれい事にこだわっていたら、あの素晴らしいドゥバイヨルの存在は無かったであろうから深くこだわらないことにする。

ドゥバイヨルはホントに最高!貴族のような顔立ちにそぐわない下品極まりない粗野な言葉遣い。自信家で利己的。一瞬たりとも殺人を躊躇わない冷酷さ。それでも自分なりの掟は持ち合わせているという実に子供らしくないキャラクター。リアルでは絶対に付き合いたくないタイプだが、完全に主人公を食ってしまっていた。こいつのためだけに別シリーズを一本作ってもらいたいくらいだ。

乙一作品としてはおとなしめかな

乙一作品としては、黒過ぎもせず、かといって白成分も少なめで、冒頭部分を少し読んだだけだったら彼の作品だとは気付かなかったかもしれない。張り巡らされた伏線の数々が、少々あからさま過ぎて、ある程度先が読めてしまったのは、スレ切った読者としては物足りないところだった。

本作以降、乙一はふたたび作品発表を再開する。ただ、このあたりからわたし自身が小説作品を読まなくなってしまったので、かなりの数の乙一作品が未読である。さいきん、ようやく小説が読めるようになってきたので、ぼちぼち乙一の作品についても再チャレンジしてみるつもりである。

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