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『ポップ1280』ジム・トンプスン 1960年代が舞台のノワール小説

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2001年版「このミス」海外部門第1位

1964年に書かれた作品。原題は『Pop. 1280』である。最初の邦訳版は2000年に刊行されている。翻訳者は三川基好(みかわきよし)。

ジム・トンプスン(James Meyers "Jim" Thompson)は1906年生まれのアメリカ人作家。スティーブ・マックイーン主演の映画『ゲッタウェイ』の原作・脚本担当として有名かな。

多くの作品を残しているが、あまり日本では作品が出ていない。90年代後半から、本国のアメリカでも再評価の動きが高まっており、本書は2000年に扶桑社から刊行されている。2001年版の「このミス」海外部門の第一位に輝いた作品である。

扶桑社文庫版は2006年に登場している。

『ポップ1280』は根強い人気があったようで、2019年には新装文庫版が登場している。いまでも入手が容易なのは嬉しい。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

アメリカの田舎町を舞台としたミステリを読んでみたい方。とびっきりダークで救われないタイプの作品がお好きな方。最後にどんな結末が待ち構えていても許容できる方。1960年代のアメリカミステリに興味がある方におススメ。

あらすじ

20世紀初頭のアメリカ。南部の田舎町ポッツヴィルの人口は僅か1,280人。こんな寂れた街にもトラブルは起こる。保安官ニック・コーリーは住民のもたらす厄介事に心底疲れ果てていた。悪妻と低能なその弟。愛人やかつての婚約者とのいざこざ。プライベートでも問題を抱え、来るべき保安官選挙には有力な対立候補が現れる。困り抜いたニックは、禁断の道へ足を踏み入れていく。

ここからネタバレ

ノワール小説の傑作

本作はアメリカの片田舎を舞台にしたパルプ・ノワールの傑作である。

どことなく頭の弱そうな主人公の下へ次々とトラブルがもたらされる。てっきり、逃げ場が無くなって、追いつめられた挙げ句に犯罪に手を染めていくのかと思いきや、話の初めから最後まで徹頭徹尾悪一色!罪悪感の欠片も無く、次々に罪を重ねていくその躊躇いの無さがあまりにも衝撃的なのだ。

「だって仕方がないじゃん」くらいな勢いで、ガンガン殺しまくる怪物的でサイコな主人公のキャラクター造形は、最近の作品だと言われても信じてしまいそう。とても40年も昔の作品だとは思えないのだ。確かにこれは、再評価されるだけのことはある。

ただ、このような作品なので読後感は最悪である。胸糞エンド系の作風を楽しめる方にはおススメしたい一作と言える。

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