「世界」シリーズの第三作
2008年刊行作品。『きみとぼくの壊れた世界』『不気味で素朴な囲われた世界』に続く「世界」シリーズ三作目。第四作としては『不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界』がある。
初出は「メフィスト」。今回、話としては別にどうでもいいんです的な内容。内容は無いよう。前回はチョイ役扱いに甘んじていた病院坂黒猫だが、今回はメインキャラとして登場している。
刊行から十余年を経ているが、シリーズが完結していないこともあってか、文庫化はされていない。講談社ノベルス版のみが存在する。
また、一作目『きみとぼくの壊れた世界』、二作目『不気味で素朴な囲われた世界』では講談社BOX版が刊行されていたが、本作からはそれも無し。こういう意味の無い売り出し方はホントに辞めてほしい。講談社BOX版で揃えていた読者は激怒ものであろう。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
病院坂黒猫がとにかく好き!という方。病院坂黒猫が登場するならすべてが許せる方。シリーズが進につれて、しょうもない話になってきてるけど気にしない方。イギリスが好き!イギリスが舞台となっている小説を読んでみたい方におススメ。
あらすじ
病院坂黒猫と櫃内様刻はロンドンに向かう国際便の機中に居た。彼らは英国の推理作家ガードル・ライアスの依頼を受け現地へ向かう途中だった。読むものを必ず死へと追いやる「呪いの小説」を書いてしまったと訴える作家の言葉はどこまでが真実なのか。ロンドンへと降り立った二人は、半信半疑の中依頼の解決に乗り出す。
ここからネタバレ
内容は薄いが、黒猫派としては満足
作者は取材のためにロンドン行ったのかな。単にロンドン観光案内を書きたかっただけなんじゃないかと。ただひたすら病院坂黒猫さんの魅力を語り尽くす為だけに書かれたお話。この際櫃内クンはどうでもいいやね。「くろね子」さんの字面そのもが既に苛烈なまでに愛らしい件。前巻は彼女の出番が少なかったので、黒猫派としては欣喜雀躍の思いである。このシリーズ、毎回黒猫メインの話でいいと思うのだが、作者的にはそうではないらしい。
キャラクター小説と割り切る
どこまでメタなのかと思わせておいて、あんまり意味はありませんよという、やる気のないオチ。最後の失速ぶりは予定通りなのだろうか?謎がどんどんショボくなるのは作者自身認めているけれども、それは計算の上でのことなのか、単なる劣化なのか。
まあ、でも体操服姿のくろね子さんが可愛いので全てアリでいいや。結論としてくろね子さんを活躍させるには夜月の存在が邪魔だということだけはよく判った。だって、夜月が出てきたら櫃内クンはそれどころじゃないだろうからね。