方向模索中の本読みBlog

書評Blogの予定だけど、現在方向性模索中。基本ネタバレありなので注意してね。

佐藤賢一「カルチェ・ラタン」は16世紀のパリを舞台とした連作短編小説

16世紀のパリを舞台とした成長物語

カルチェ・ラタン (集英社文庫)

カルチェ・ラタン (集英社文庫)

 

 2000年作品。佐藤賢一、七作目の作品。お得意のフランスモノである。

不勉強にして知らなかったのだが、本作の主人公ドニ・クルパンは16世紀フランスきっての大人物であったらしい。功成り名遂げた盛年期でなく、箸にも棒にも引っかからなかった青年期に光を当てたのが本作。パリの学生街カルチェ・ラタンの誇る天才ミシェルとの交流を通して、ドニが一人前の男に成長していくさまを描く。

あらすじ

1536年のフランス、パリ。資産家の御曹司ドニ・クルパンは親の七光りで夜警隊長になってはみたものの、慣れない仕事に孤軍奮闘。事をし損じては元家庭教師の学僧ミシェルに泣きつく始末。パリの巷に巻き起こる様々な難題をドニとミシェルが解決していく。相次ぐ事件の背後にはどうやら共通の人物の陰が見え隠れしているのだが……。

意外なゲストが登場する連作短編形式

本編は連作短編とも取れる形式となっていて、小イベントをクリアしながら、次第にラスボスが判明。最後には全ての伏線がしっかり消化されて大団円を迎えるという構成を取っている。全体のボリュームはけっこうある作品なのだけれども、一編あたりの文章量が少なめ。ヘタレでダメダメな主人公が非常にユーモラスに描かれていることもあって、歴史嫌いな人間でも物語の中に入りやすい作風になっている。

フランシスコ・ザビエルや、イグナティウス・ロヨラ、カルヴァンといった歴史上の有名人が登場し、いずれも人間味豊かに描かれている点も親しみやすくて良いのである。同時代を生きた人物を、思いもよらぬ組み合わせで登場させるのは、山田風太郎の明治モノを彷彿とさせられる手法だ。こういうの大好き。歴史好きなら思わずニマニマしてしまうこと間違いなしである。

最後は愛で綺麗にまとまる

神とは、信仰とは何なのか、そんな深遠なテーマを表向きは漂わせながらも、やっぱりサトケン作品。最後は愛である。キリスト教の教義はサッパリ判らなくても、非モテ系でドジっ子の主人公が悪戦苦闘の末に嫁さんを獲得するまでの物語は素直に楽しめる。マルトさんはちょっと、男にとって都合のいい女に過ぎるんじゃないかと、茶々入れしたくもなるけど、ハッピーエンドには替えられない。