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『忘れないと誓ったぼくがいた』平山瑞穂の第二作は切なさあふれる恋愛小説

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平山瑞穂の第二作品

2006年刊行作品。『ラス・マンチャス通信』の平山瑞穂(ひらやまみずほ)が、ファンタジーノベル大賞受賞後一年半の期間を経て上梓した二作目が本書である。

新潮文庫版は2008年に登場している。

忘れないと誓ったぼくがいた (新潮文庫)

不条理な運命に引き裂かれていく恋人たち。抗いがたい何ものかに対して、懸命に立ち向かおうとする主人公。その心の葛藤を描いた恋愛小説。前作が前作だっただけに、あまりに正統派かつ清らかな交際に終始する感動系メロドラマでたじろぐ。平山瑞穂よ、どうしてしまったんだ。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

平山瑞穂が描く恋愛小説を読んでみたい方、激しく切ない恋愛小説を読みたい方、心を激しく揺さぶられたい方、人間の記憶に興味がある方におススメ

あらすじ

織部あずさ。彼女のことを覚えているのはもうぼくだけかもしれない。ふとした偶然から知り合い、意気投合したあずさとぼく。しかし彼女には誰にも言えない秘密があった。一定の周期で出現と消失を繰り返すあずさ。友人も両親も、そしてぼくの記憶からも、彼女が存在した事実そのものが消えていく。そしてその先には……。

ここからネタバレ

消える彼女と消える記憶

特定の間隔で存在が消えてしまうヒロイン。時間が経てば彼女は戻ってくるが、次第にその感覚が短くなって……という展開を辿る。存在が消えることで、彼女そのものに対しての記憶も次第に失われていくというところがミソ。

北村薫の『ターン』とかケン・グリムウッドの『リプレイ』みたいなストーリーを予想したが、時間モノ的なこだわりはあまり無い。最近なら、葉月抹茶の『一週間フレンズ。』 の方が近いか。難病モノの変形と捉えた方が解りやすいかもしれない。会えなくなるだけでなく、覚えていることすらも許されないという設定が、泣かしのポイントではないかと思われる。

決して悪くはないと思うけど、『ラス・マンチャス通信』であれだけ独自の世界を見せつけてくれた平山瑞穂が、こうしたオーソドックスな感動モノを出してくるとは正直意外だった。こういう話の方が売れるのだろうけど、もっとぶっ飛んだ話を書いて欲しいような気もする。  

映画化もされていた

恥ずかしながら、全然知らなかったけど、2015年に村上虹郎と早見あかりのコンビで、映画化されていたみたい。刊行されてから10年近く経って映画化されるって不思議な感じ。この類の、切ない感じの原作が、映画化ネタとして求められていたってことなのかな。Amazonのレビュー見る限り、けっこう評判いいみたいなので、折を見てチェックしてみるつもり。

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