アニメ『ラーゼフォン』のシェアワールドノベル
2002年刊行作品。今は亡き徳間デュアル文庫からの登場。
作者の神林長平(かんばやしちょうへい)は1953年生まれのエスエフ作家。
『ラーゼフォン』は2002年に放映されたアニメーション作品。『エヴァンゲリオン』後に登場した「エヴァンゲリオン」的な作品の中では比較的判りやすく、わたし的には大好きな作品である(『ヘミソフィア』が名曲過ぎて、思い出すだけで泣ける)。
本作はその世界観を用いたシェアワールドノベルである。この手のメディア連動企画に神林長平クラスのベテランが出てくるのは珍しいよね。いちおうカテゴリ名に「ノベライズ」と振ってしまったけど、正確にはアニメーションのノベライズでは無い。
ちなみにノベライズはMF文庫Jの方からちゃんとしたのが(大野木寛が書いている)出ているので注意が必要である。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
アニメの『ラーゼフォン』が大好きだった方。なおかつ、全然違う話が展開されても許せる方。神林長平が描く『ラーゼフォン』的な世界観を楽しみたい方。神林長平が書いたものなら何でも読む!という方におススメ。
あらすじ
村瀬明は永劫にも思える時間の牢獄につながれていた。数限りない人生を繰り返し、死の次の瞬間には16歳の少年として目覚める。この世界は間もなく謎の存在MUの襲撃を受け、大いなる変貌を遂げる。無限のリフレインから抜け出す鍵は<ラーゼフォン>にある。並行世界の自身からメッセージを受け取った明は行動を開始するのだが……。
ここからネタバレ
似て非なる神林ワールド
彩人(アニメ本編の神名綾人相当)の息子明が主人公。叔父は如月一樹(本編だと樹に相当)。朝比奈さんとか、功刀さんとか出てくるけど、基本別のお話だと思っていい。『ラーゼフォン』素材だけ使って神林ワールドを新たに構築しましたよという作品。でも『ラーゼフォン』を知らないと意味不明で終わることは間違いなしだろう。ファン向けの商品と考えればそれでもいいのかもしれないけど。
紫東遙の出てこない『ラーゼフォン』なんて……
表紙、出渕裕。口絵、末弥純。本文イラスト、山田章博。と、ありえない程豪華なイラスト陣を揃えてはいるのだけど、画風は極力アニメの影響を廃しており、なんだか勿体ない。これじゃ原作ファン的にはイマイチ感がぬぐえない。
それから、なんといっても紫東遙の出てこない『ラーゼフォン』は『ラーゼフォン』では無いので、このあたりもシェアワールドストーリーとはいえ、そこを外してどうするよと突っ込みたくもなってしまうのである。
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