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『マッカンドルー航宙記』チャールズ・シェフィールド 心痺れるハードSFの世界

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ハードSFの優れた書き手だったチャールズ・シェフィールド

1991年刊行作品。オリジナルの米国版は1983年刊行。1978~1983年にかけて発表された作品群をまとめた連作短編集である。原題は『The McAndrew Chronicles』。

作者のチャールズ・シェフィールド(Charles Sheffield)は出身はイギリスだが、最終的な国籍はアメリカ。本職は科学者だが、SF作家業もこなすという二束の草鞋で成功した作家。2002年に物故されている。あまり作品数は多くないが優れたハードSFの書き手として知られている。

マッカンドルー航宙記 (創元SF文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

カー・ニューマン・ブラックホール。オールトの雲。放浪惑星。相殺航法。こうした言葉にたまらなく惹かれる方。なんだかよくわからないけど、「すごい科学」の雰囲気に弱い方。ガチガチのハードなエスエフの世界に憧れる方におススメ。

あらすじ

マイクロブラックホールの権威として、太陽系屈指の天才物理学者の名を欲しいままにするマッカンドルー博士。彼はパートナーの女船長ジーニーと共に宇宙を行く。超高速での宇宙旅行を可能にした相殺航法は二人に数々の驚くべき出来事をもたらす。二人の活躍を描く五編のハードSF短編集。

ここからネタバレ

ハードSFとは?

ハードSFって何?という方もおられうと思うので、wikipedia先生より引用。

ハードSF(英: hard science fiction)は、サイエンス・フィクションのうち、(1)主流あるいは「本格」SF (ハードコアSFとも)、(2)科学性の極めて強い、換言すれば科学的知見および科学的論理をテーマの主眼に置いたSF作品を指す。また、そのようなスタイルを指す。

ハードSF - Wikipedia より

物理法則とか気にしないでなんとなく宇宙が舞台です!みたいなライトSFとは真逆。科学的な論理を厳密に順守し、科学的な事実や法則性が物語の内容と密接に関連してくる。そんな作品がハードSFと呼ばれる作品群なのである。

文系人間憧れのハードSFの世界

物理、化学が壊滅的に判らず、長らく文系人生を歩んできた身としては「ハードSF」と聞くだけで身も心も引き締まるものがある。理系方面に疎いだけに「すごい科学」に憧れる心というのは人一倍文系人間にはあるように思えるのだが、わたしだけ?

カー・ニューマン・ブラックホール。オールトの雲。放浪惑星。そして相殺航法!相殺航法による100G加速で<ホアチン>号は100億光年を半年で飛ぶことが出来るのだ!何言ってるか自分でもよく判っていないのだが、科学に疎い文系人間はこうした用語を聞かされるだけで恍惚としてくるのである。

本当になんとも魅力的な科学的テーマが惜しげもなく盛り込まれている。一般人としてはどこまでが科学でどこからがフィクションの領域なのか良く判らないのが哀しいところではあるが、作者本人による巻末付録で懇切丁寧に解説が施されているので安心して読むことが出来るのも好印象。ハードSFに初めて触れる方にはおススメと言える作品かもしれない。

なお、本作には続篇の『太陽レンズの彼方へ マッカンドルー航宙記』(原題『The McAndrew Chronicles 2』)が存在する。こちらの感想はまた後日に。

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