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『ドッペルゲンガー宮《あかずの扉》研究会流氷館へ』霧舎巧 第12回メフィスト賞受賞作

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霧舎巧のデビュー作

1999年刊行作品。第12回のメフィスト賞受賞作品である。本作はメフィスト賞にしてはけっこう普通に本格ミステリしている作品で、刊行当時新鮮な印象を受けた記憶がある。

作者の(きりしゃたくみ)は1963年生まれ。ペンネームの名付け親は島田荘司だ。代表作は本作を含む《あかずの扉》研究会シリーズ。あとは、私立霧舎学園ミステリ白書シリーズだろうか。

ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ (講談社ノベルス)

講談社文庫版は2003年に登場している。 解説は、はやみねかおるが担当している。

ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ (講談社文庫)

ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ (講談社文庫)

 

あらすじ

富豪、氷室流侃(ひむろりゅうかん)の築いたゴシック様式の壮麗な洋館「流氷館」。この地を訪れた<<あかずの扉>>研究会の一行。そこでは驚天動地の出来事が起こっていた。消失した館の人々は、全く同じ間取りのもう一つの流氷館に閉じこめられているというのだ。殺人鬼が暗躍する中、次々と数を増していく犠牲者たち。犯人は何処に。そして流氷館の秘密とは。

メフィスト賞にしては珍しい本格モノ

「懐かしい」。この作品を読んでまず感じたのは強烈な懐かしさだった。

いかにもな仕掛け満載の洋館に、学生推理サークルの面々、エキセントリックなヒロインにちょっと抜けてる主人公。どっかで見たような設定てんこもりの大盤振る舞いに最初はたじろぐ。ここまでありがちな設定でいいのかと思う反面、こういうのをまた読んでみたかったんだと喜んでいる自分も居たりして心中は複雑だったりする。

圧巻の解決編

デビュー作ということもあって、リーダビリティは良好とは言い難く、前半パートはやや冗長に感じさせられる部分も多い。しかし120ページにもなる解決編はとにかく圧巻。ただ、前半から丁寧に読んでいかないと後半わけわからなくなっていくので注意が必要かな。ダブル名探偵の推理合戦というのは面白い趣向だと思う。久々の館モノを堪能した。

 

《あかずの扉》研究会シリーズは全四作

なお、《あかずの扉》研究会シリーズはこれまでに四作が刊行されている。各巻のタイトルは以下の通り。ひととおり読んでいるので、おいおいご紹介してく予定。

ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ 1999年
カレイドスコープ島 《あかずの扉》研究会竹取島へ 2000年
ラグナロク洞 《あかずの扉》研究会影郎沼へ 2000年
マリオネット園 《あかずの扉》研究会首吊塔へ 2001年

ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ (講談社ノベルス)

ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ (講談社ノベルス)