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『どろぼう熊の惑星』R・A・ラファティの日本オリジナル短編集

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遅咲きのエスエフ作家ラファティ

作者のレイフェル・アロイシャス・ラファティ(Raphael Aloysius Lafferty)は1914年生まれのアメリカ人男性。SF作家としてのデビューは1960年。

注目を受けメジャー化していくのは1968年以降。というわけなので54歳にしてようやく表舞台に出てきた遅咲きの作家ということになる。残念ながら2002年に87歳で世を去っているが、多くの傑作を残している。

どろぼう熊の惑星 (ハヤカワ文庫SF)

1993年刊行作品。本書に相当する米国でのオリジナル版は存在しない。本書は日本オリジナルの短編集なのである。この時期までに刊行されたラファティ短編作品から、選りすぐった17編が収録されている。

あらすじ

ここは不思議な異星人どろぼう熊の住む惑星。ありとあらゆるものを盗んでいく彼らの前に惑星調査隊の面々はなすすべもなく立ちつくす。悪夢のような出来事を描いた表題作を始め、エスエフ界のほらふきオジサン、ラファティならではのセンスオブワンダーに満ちた17編の短編を収録。日本版オリジナル傑作集。

ラファティの日本オリジナル作品集

一部では熱狂的に支持されている作家がその気持ちは確かによくわかる。

本書を読むと、エスエフというものがいかにセンスオブワンダーが大事なジャンルであるかということを思い知らされるのだ。抜群の奇想の冴えとそれでいて幅広い作風。よくもまあ、これほど奇妙な物語を次から次へと思いつけるものである。これはなかなか得難い作家と言える。

↓ここからネタバレ

特に気になる作品はこちらの四編

「世界の鰐について」は世界を動かす秘密結社についてのシニカル過ぎる考察が愉快。こういうの好き。

「寿限無寿限無」はエスエフ界では有名作品ながらも、恥ずかしながら初読。究極の徒労とはこのこと。なんとこれ、ラファティの作品だったのか!

「世界の蝶番はうめく」はその視点の壮大さに感じ入る。エスエフ作品はこういう話が読めるから堪らない。

「草の日々、藁の日々」。選び抜かれた作品集というだけあって、本書の収録作はいずれも傑作揃いだが一番のお気に入りはこのお話。計算外の特別な日を獲得するために闘争する人類を描いた作品。ブラックな終わり方でありながら妙に切ない読後感が良いのである。

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