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『僕僕先生』仁木英之 ニートな僕と美少女仙人の物語

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第18回日本ファンタジーノベル大賞、大賞受賞作

2006年刊行作品。第18回日本ファンタジーノベル大賞、大賞受賞作品。作者の仁木英之(にきひでゆき)は1973年生まれ。本作『僕僕先生』がデビュー作となる。

なお、この年の優秀賞は堀川アサコの『闇鏡』なのであった。

僕僕先生

ちなみに僕僕先生のオリジナルというか元ネタは中国の昔話集「広異記(こういき)」にあるらしい。

新潮文庫版は2009年に登場している。

僕僕先生(新潮文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

美少女仙人×ニート×中華ファンタジー、この組み合わせに惹かれるものを感じる方。中華系のファンタジー小説がお好きな方。中国の唐代の物語に興味がある方。日本ファンタジーノベル大賞系の作品を読んでみたい方。仁木英之のデビュー作を読んでみたい方におススメ。

あらすじ

唐代、玄宗皇帝の御代。県令であった父の庇護の下、王弁は働くでもなく、勉学にいそしむでもなく、日々をのんべんだらりと過ごしていた。見かねた父がいくら苦言を呈しても馬耳東風。しかし父の使いとして嫌々詣でた仙人の家で運命の出会いが待っていようとは。姓は僕、名も僕。字は野人。美少女の外見を持つ奇妙な仙人に王弁は魅せられていくのだが……。

ここからネタバレ

美少女仙人、僕僕ちゃんの魅力

唐代のニート主人公が、年齢はたぶん数万歳。でも外見は十代半ばの美少女仙人に首っ丈になり、次第に生きがいを見いだしていく。僕僕ちゃんの魅力があってのこととはいえ、徐々に主人公がやる気を引き出されてくる展開が面白い。

僕僕先生は通常形態は美少女なのだが、一般人の前に出るときは白髪白髭の爺さんモード。他の姿にも変幻自在で、身近でお世話をしていてムラムラしまくっている主人公も、「もしかしてホントに爺さんだったら」という迷いから押し倒せない(笑)。つれないように見せて、混浴風呂に誘ったり、隙を見せまくりの僕僕ちゃんがけっこうえげつないのである。

唐代の大物キャラが続々登場

玄宗皇帝をはじめとして、唐代の道士司馬承禎、伝説の名馬吉良、さらには帝鴻(黄帝と同一人物説を採用)、渾沌のような超大物まで登場。この時代の中国はいろいろなファンタジー要素が盛り込めて楽しいねえ。則天武后の事績や唐王朝のなりたち、飛蝗対策など、歴史的なファクターもきっちり取り込まれていて虚実織り交ぜたごった煮感が楽しい。僕僕ちゃんの素性(哀しい過去?)を最後まで明らかにしなかったのが、ちょっとひっかかるけど、これはまあ書かない方が花ということで。

「僕僕ちゃん」は人気キャラとなり、以後シリーズ化される。2020年現在で、9冊まで続篇が刊行されている。

コミカライズ版もある

なお、本作は 朝日新聞出版のマンガ雑誌『Nemuki+』にて、2014年から2018年にかけてコミカライズ版が連載されていた。作画は大西実生子。全四巻。

僕僕先生(1) (Nemuki+コミックス)

僕僕先生(1) (Nemuki+コミックス)

  • 作者:大西実生子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2015/12/07
  • メディア: Kindle版
 

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