ネコショカ

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いじめの傍観者は許されるのか?『コールドゲーム』荻原浩


ブレイク目前の荻原浩作品

2002年刊行作品。荻原浩としては七作目の作品。『明日の記憶』(2005年の本屋大賞第二位)でブレイクする前の作品ということになる。

コールドゲーム

単行本は講談社から刊行されていたが、なぜか文庫版は新潮社より2005年に登場している。

コールドゲーム (新潮文庫)

コールドゲーム (新潮文庫)

 

あらすじ 

高校三年の夏に事件は起きる。中学時代のクラスメイトたちが次々と襲撃を受け、その容疑者に虐めのターゲットであった「トロ吉」こと廣吉が浮かび上がってくる。渡辺光也は、クラスのリーダー格で虐めの首謀者でもあった亮太らと共に防衛隊を結成する。しかしトロ吉は捕まらず被害者だけが増えていく。そして復讐の手は彼ら自身にも迫ってくる。

いじめ被害者の凄惨な復讐劇

「トロ吉」はかつて自分が虐められていた手口を踏襲した形で次々と復讐を遂げていく。主人公の立ち位置は、いじめリーダーの親友であったが故に虐めを強要されることがなく、暴力に直接荷担することはなく、かといって止めることもしなかったというポジション。事件の渦中でも、自分は直接手を下していないから、実は許されるのではないかと、防衛隊を組織しながらも一歩引いた傍観者的な心境でいる。

登場しない復讐者

復讐者である「トロ吉」本人はなかなか登場しない。かつては体の弱い貧相な少年であった「トロ吉」は、大男になっている!ヘアスタイルがモヒカンになっている!バイクを乗り回している!武道の達人になっている!等々、主人公が聞き込みを続ける過程で様々な伝聞情報が入り、次第に恐怖の虚像が一人歩きしはじめる。着実に被害者が増えていく中で、このあたりのサスペンス的な描写はなかなか面白い。

「俺たちそんなに悪いことしたっけ」

虐められた被害者サイドが怨念を募らせていくのに対して、加害者側の「俺たちそんなに悪いことしたっけ」感は酷い話だと思いながらも、でも実際の世の中は、残念ながらそんなものだろうなとも思う。傍観者であった自分自身も報復の対象だと知った主人公の内面をもう少し深く掘り下げて欲しかったのが残念な部分。

それから地獄の蓋が開いたかのような終盤のカタストロフィは凄みがあり、ホラーとしても面白いのだけど、あまりに仕返しの手段が凄惨なため「トロ吉」側に同情出来なくなってしまうのが難点か。

コールドゲーム

コールドゲーム