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『クロノス・ジョウンターの伝説』梶尾真治 7回書籍化された人気作品

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四半世紀の間に7冊!

もともとは1994年に朝日ソノラマより刊行されていた作品。朝日ソノラマの、今は亡き小説誌『グリフォン』に掲載されていた作品(「吹原和彦の軌跡」に相当)に、「布川輝良の軌跡」を追加したもの。

続いて1999年にソノラマ文庫NEXTとして復刊した際に、「鈴谷樹里の軌跡」が追加された。

2003年に刊行されたソノラマ文庫版では、徳間デュアル文庫のアンソロジー本『少女の空間』に書き下ろされていた、外伝「朋恵の夢想時間」が追加されている。

そして2005年に新装版の『クロノス・ジョウンターの伝説』がソノラマ文庫から再登場。

同じく2005年に『新編 クロノス・ジョウンターの伝説』が朝日ソノラマから登場。なんで2005年に二冊も刊行されているのかというと、演劇集団キャラメルボックスによる舞台版が登場したことが影響しているのではないかと思われる。

これで終わるかと思ったら、三年後の2008年にはさらに新作を追加した『クロノス・ジョウンターの伝説∞インフィニティ』が登場した。こちらでは、「栗塚哲矢の軌跡」「野方耕市の軌跡」「きみがいた時間 ぼくのいく時間」が追加された反面、「朋恵の夢想時間」がカットされた。

ソノラマ、この話を何回出してるんだ。。。ソノラマ末期のお家路事情の苦しさを代弁しているかのような乱発ぶりである。

さらに(まだあるのだ)、2015年に徳間文庫版が登場。こちらが完全版かな?巻末には年表もついている。これも演劇集団キャラメルボックスによる再舞台化が影響しているものと思われる。

ただ、以下の書影は2019年の映画版のビジュアルが反映されているようだ。

クロノス・ジョウンターの伝説 (徳間文庫)

ということで、『クロノス・ジョウンターの伝説』は四半世紀の間に7回書籍化されている。これはなかなか珍しいのではないだろうか?

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

時間モノ。特に恋愛要素が強く絡んだ時間モノが好物の方。甘々の恋愛小説が好きな方。純粋で切ない恋物語を堪能したい方。梶尾真治作品を読んでみたいけど、どれから読んでいいか迷っている方におススメ!

あらすじ

過去への旅を可能にする超発明、クロノス・ジョウンターにまつわる物語。想い人の命を救うため、自らの危険をも厭わず時間旅行への執念を燃やす「吹原和彦の軌跡」。訪問先の過去世界で芽生えた仄かな恋情に苦悩する「布川輝良の軌跡」。死別した初恋の人を想い続ける女性に、ある日訪れた奇跡を描く「鈴谷樹里の軌跡」他。

時間旅行をめぐる切ない恋の物語。

ここからネタバレ

時間メロドラマの傑作

とにかくメロメロだ。手も握っていないような女のために、愚直なまでに時間旅行を繰り返す男。自らの人生を棒に振ってなおかつ、やっとの思いで救い出した彼女にはもう会うことが出来ない。いかにもカジシンらしいメロドラマな展開である。

時間をテーマにしたエスエフではあるが、時間だとかタイムマシンがどうこうなんてことはこの作品集の中では副次物に過ぎない。惚れた異性のために何でもする。たまたまそのための道具がクロノス・ジョウンターだったというだけのこと。たまにはこれくらい甘々な話もいいんじゃないかと。その想いの真っすぐさが魅力の作品と言える。

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