航空自衛隊救難飛行隊が舞台
2006年刊行作品。小川一水初のMF文庫作品。この時期の小川一水作品に多かった、公務員がとにかく頑張る系のお話である。サブタイトルは「レスキューウィングス」。
恥ずかしながらよく知らなかったのだが、本作はアニメの『よみがえる空 -RESCUE WINGS-』のスピンアウト系の作品であるらしい。
航空自衛隊の小松基地に所属する救難飛行隊の活躍が物語の主軸となっていて、アニメやマンガ、実写映画など、クロスメディア展開されていた模様。
このシリーズの映画版『空へ-救いの翼 RESCUE WINGS-』は2008年に劇場公開された。
その余波というか、恩恵と言うべきか、小説版である本作も2008年にMF文庫ダ・ヴィンチより、再刊されている。こちらはライトノベル色を完全に廃したカバーデザインとなっている。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
救難救助モノ、レスキュー系の作品が好きな方、自衛隊の意外な側面を知りたい方、小川一水が描く自衛隊作品を読んでみたい方におススメ。
あらすじ
少年の日、高巣英治は台風の中ボートで海へ流されあやうく遭難しかけたところを、自衛隊のレスキュー隊に救われる。成長した英治は航空自衛隊救難飛行隊に入隊。どんな悪環境下でも要救助者を発見できる特技から「千里眼」と呼ばれ、多くの人々の命を救っていく。しかし英治の特技には驚くべき秘密が隠されていて……。
ここからネタバレ
救難現場の理想と現実
雪山でタクシー代わりに救助ヘリを呼ぶバカオッサンとか、自衛隊は嫌いだから助けないでくれと救助を拒む左寄りの人とか、ライトノベル離れしたシリアスなテーマが多い。現代を舞台にした作品で、小川一水にしてはエスエフ要素はかなり控えめだ。ライトノベル的な要素としては憑依霊の灯ちゃんが出てくるところくらい(って、それでも十分か)。あとは、美女・美少女度が自衛隊にしては高すぎるあたりかな。
一つ一つのエピソードは悪くないものの、重いテーマを一冊で書ききるには短すぎた印象。続編は出ないのだろうかと、刊行当時は思ったものの、この作品の成立経緯を考えるとさすがにそれは無理があるかな。