生垣真太郎の第一作
2003年刊行。第27回のメフィスト賞受賞作品。生垣真太郎(いけがきしんたろう)のデビュー作である。メフィスト賞にしては、少し毛色の変わった(もともと変な話ばっかりだけど)お話。アメリカを舞台とし、外国人を主人公に据えた作品である。
残念ながら文庫化はされていない。
作者の生垣真太郎は1973年生まれ。京都大学工学部卒。実際にニューヨークでの生活した経験がある模様。
本作以降は、2003年に『ハードフェアリーズ』を上梓するもの書籍化された作品はここまで。単行本未収録作品に2004年の「メフィスト」掲載作『よくあるモンスター映画に、たとえばこんなエピローグを 』と、2005年の「メフィスト」掲載作『幼なじみ』、そして2006年の「群像」掲載作『キメラ』が書かれているが、その後は作品を書いていない。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
ゼロ年代のメフィスト賞作品に興味がある方。海外、特にアメリカ、ニューヨークを舞台としたミステリ作品を読んでみたい方。日本人が書いた、外国人が主役となるミステリに関心のある方。ちょっと変わり種のミステリを読みたい!と思っている方におススメ。
あらすじ
1979年のニューヨーク。秋。映画編集者であるディヴィッドは仕事の途中で不思議なフィルムを発見する。スクリーンの中で凄惨な死を遂げる女優。フィルムに封じ込められていた映像はあまりに真に迫った畏るべきものだった。果たして、それは演技なのか、現実にあったことなのか。主演女優アンジェリカにまつわる謎を追って、ディヴィッドは調査を開始する。
ここからネタバレ
海外ミステリっぽいテイスト
本作では女優のアンジェリカと、失踪したもう一人のアンジェリカが登場する。これに対して、主人公が自ら封印してしまった少年の日の思い出が絡んでくる。時に錯綜し、もつれながら、読者を翻弄するかのようにメタな世界へ墜ちていく展開が面白い。海外を舞台として、主人公も外国人であるため、国産ミステリではなかなか味わえないテイストが楽しめるのが特徴かな。
でも、あともう一捻りを求めてしまうのは贅沢な望みか。ミステリ界の一芸入試、メフィスト賞の受賞作にしては今ひとつ突き抜けたところを感じ取れなかったのが難点といえば難点。映画の世界については相当に詳しいのだろう。ペダンティックな部分も読み物としては面白かったし、この世界についても愛情も感じるのだが、肝心の事件の解決にうまく寄与させられていたかと云うと、微妙なところ。
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