「銀盤カレイドスコープ」シリーズの三作目
2004年刊行。シリーズ三作目。パートナーであったピートを失い、トリノ五輪での活躍を終えてからのタズサの物語である。
あらすじ
トリノオリンピック後の世界選手権で二位。世界のトップスケーターへの仲間入りを果たした桜野タズサは単身アメリカへ渡る。友人シンディの怪我をきっかけに、一年間だけのペアへの転向を決意したタズサだったが、パートナー、オスカーとの呼吸が簡単に合うはずもなく苦境に陥る。日本代表として世界選手権への出場を目指す二人に活路は開けるのか。
桜野タズサ、ペアスケーティングに転向!
天上天下唯我独尊ヒロイン、桜野タズサ。なんとペアスケーティングに挑戦してしまうのである。どう読んでも二巻で内容的に綺麗に完結してしまっていただけに、果たしてどう続きを書くのかと思っていたらこんな変化球で勝負してきた。これも多分に作者のフィギュアスケート愛が反映されているものと思われる。海原零、ペア競技もきっと大好きなのであろう。
しかしピートを失った後の落ち込みとか、コンディション崩して成績落とすとかそういう浪花節的なエピソードを期待していたので、その点はちょっと肩透かし。タズサはそんなに弱いキャラクターじゃないってことか。
恋愛モードのタズサが見られる?
とはいっても、世界選手権で二位に入ってこれからがまさに上り調子って時にペアに転向するスケーターっているのだろうか?唐突感は拭いきれないけど、男っ気の無いヒロインにも恋愛経験をってことなのかもしれない。
が、かねてからの才能と美貌に加えて、世界的名声と経済力まで備えてしまったタズサはもはや無敵状態。ラノベ界(当時)でもかつて無いヒールなヒロインとして成長を遂げている。これじゃそこいらの男は寄ってこれないだろうなあ。でもラストシーンはちょっぴり切ない。
余談ながらスケート競技の中継でペアのフィギュアを見ていると、シングルとはまったくの別競技で驚かされる。シングルであればミスをしても自分だけのことで済むけれども、ペアは相手が居るわけで。パートナーを傷つけてしまうリスクが常に付きまとうペア競技の緊張感は、シングルとは別次元の難しさがあるのだろうね。
銀盤カレイドスコープ vol.3 ペア・プログラム:So shy too?too princess (集英社スーパーダッシュ文庫)
- 作者: 海原零
- 出版社/メーカー: 集英社
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