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『歪んだ創世記』積木鏡介 第6回メフィスト賞受賞作

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乾くるみ、浦賀和宏との同時受賞作

1998年刊行作品。この作品も既に四半世紀近くも前の作品となってしまった。メフィスト賞の歴史も、既にけっこうな歳月になってきているよね。

歪んだ創世記 (講談社ノベルス)

積木鏡介(つみききょうすけ)は1955年生まれ。第六回メフィスト賞受賞となった本作が最初の作品となっている。なお、第四回の乾くるみ『Jの神話』、第五回の浦賀和宏『記憶の果て』は同時発表タイトルである(この時は三回分がまとめて発表された。凄いラインナップである)。

積木鏡介はこの後、本作に加えて、『魔物どもの聖餐(ミサ)』『誰かの見た悪夢』『芙路魅(ふじみ)』と、計四作を講談社ノベルズから送り出しているのだが、何故かいずれも文庫化されていない。大人の事情という奴なのだろうか。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

メフィスト賞創設期の受賞作品を読んでみたい方。メフィスト賞受賞作品らしい「尖った」ミステリを読みたいと思っている方。孤島を舞台としたミステリ作品がお好きな方。積木鏡介のデビュー作が気になる方におススメ。

あらすじ

目覚めると私はその部屋に居た。全ての記憶を失って。そして片手には手斧を握りしめて。部屋には同じように記憶を失った女が一人。どうやら私たちは婚約者同士であるらしい。階下には三体の惨殺死体。この地は絶海の孤島のようだ。姿を見せぬ殺人鬼は未だ島内を徘徊しているのか。そして私の記憶は何故失われてしまったのか。

ここからネタバレ

アクロバットな奇想が冴える

ミステリ界の一芸入試、いかにもメフィスト賞ならではというタイプの作品。導入はぎごちなく、どうしても硬さを感じてしまう。全体的にも文章は読みにくく、少々閉口させられるのだが、頑張って読み進めていくと、およそありえない展開が読者を待っている。

ベースとなる物語を前後入れ替えるっていうのもなかなか出来ない着想だと思うのだが、更に突き抜けて別次元からの介入者という視点を入れてくるというのは相当にアクロバチックな試みであると言える。文章がベタで損しているけどこの奇想だけは評価せねばなるまい。背表紙まで使ってのメタ構成の仕込み振りには感心させられた。こういう作品が出てくるはメフィスト賞ならではの懐の深さだろう。

最近の積木鏡介作品は?

2002年の『芙路魅(ふじみ)』以降、積木鏡介の新作は刊行されていなかったが、清涼院流水が主宰する「The BBB」(Breakthrough Bandwagon Books)にて、「都市伝説刑事」シリーズが発表されており、作家としての活動は継続している模様である。

また、共著になるが創土社のクトゥルー神話アンソロジー「クトゥルー・ミュトス・ファイルズ」の第九弾『闇のトラペゾヘドロン』に、積木鏡介作品の「マ★ジャ」が収録されている。

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