「本格ミステリ・ベスト10」で第1位!
1997年刊行作品。1998年版の「このミステリーがすごい!」の国内編で16位、「本格ミステリ・ベスト10」では1位に輝いた作品である。銘探偵メルカトル鮎が登場する長編作品としては、1991年の『翼ある闇』、 1993年の『夏と冬の奏鳴曲』、1995年の『痾』に続く四作目の作品ということになる。
ちなみにこの年は『メルカトルと美袋のための殺人』も「本格ミステリ・ベスト10」にて5位にランクインしており、麻耶雄嵩(まやゆたか)的には大いに充実した年だったのではないだろうか。
その後、1999年に幻冬舎ノベルス版が登場。
翌、2000年には幻冬舎文庫版が刊行された。文庫化早っ!
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
アベル、カインといったキャラクター名に惹かれる肩。ちょっと変わった本格ミステリを読んでみたい方、変人系の名探偵(メルカトル鮎)が好きな方におススメ!麻耶作品「らしさ」を感じてみたい方におススメ。
あらすじ
弟・襾鈴(あべる)の死の謎を追って地図にない村を訪れた兄・珂允(かいん)。その村は大鏡様と呼ばれる生神に支配され、外界に対して完全に門を閉ざした異郷だった。空を覆い尽くす鴉の群れ。蔵の中の人形。不可思議な五行思想。そして始まる殺戮劇。メルカトル鮎が明らかにする戦慄の真実とは。
麻耶作品「らしさ」をとことん楽しめる
主人公の名前からして麻耶作品。外界から閉ざされた異郷のムラ。村人の普段着は和服だし、車も無ければ電話も無い、ここは日本のどこなんだあ!っていう突っ込みは本作には全く的外れなのでやめておく(やってるじゃん)。ふんだんに散りばめられた妖しげな意匠の数々と、どっか別の世界へ逝っちゃってる主人公。麻耶作品たるもの、こうでなくてはなるまいよ。
ここからネタバレ
綺麗な幕の引き方
ラストには『春と夏の奏鳴曲』のような奇跡的力技を期待していたのだが、意外にも常識的な範囲の中で物語は結実。しかしとても奇麗な着地を見せてくれた。端正に良くまとまった秀作なのであった。作者もキャリアを積んで成長してきたということだろうか。しかし今回のメルカトル。あいかわらずなんだか良くわからないんだけど、かつてない格好良さ。イカしてる。