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これで完結!西尾維新『刀語 第十二話 炎刀・銃』

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講談社BOX12ヶ月連続刊行"大河ノベル"遂に完結

2007年刊行。毎月刊行。全十二巻シリーズの大河小説も遂に最終巻だ。

刀語 第十二話 炎刀・銃 (エントウ・ジュウ) (講談社BOX)

なにはともあれ企画倒れにせずに、毎月一冊刊行という過酷なスケジュールをこなした作者とイラストの人に拍手を。なんだかんだ言って全部揃えてしまった。「書き溜め」なしで書いているというのがどこまでホントかわからないけど、この筆の速さは西尾維新の凄いところである。

あらすじ

伊賀の地。突如現れた左右田右衛門左衛門がとがめと七花の前に立ちはだかる。手にした十二本目の変体刀、炎刀・銃が火を噴き、その銃弾はとがめを貫く。変体刀十二本の蒐集を完了させ、将軍匡綱への掲見を許された否定姫だったが、そこに復讐に燃える鑢七花が現れる。守るは家鳴将軍家御側人十一人衆。ここに最後の戦いの幕が切って落とされる。

この巻で登場する刀と対戦者

とうとうこのコーナーも最後に……。前回同様所有者は左右田右衛門左衛門(真庭鳳凰)。いちおうラスボス扱いになるのかな。しかし「連射性と速射性と精密性」云々って、それもはや刀じゃねえええ(何度も言ってるけど)。

炎刀「銃」(エントウ・ジュウ)
所有者・左右田右衛門左衛門。「連射性と速射性と精密性」に主眼が置かれている。否定姫は「遠距離からの連続精密攻撃を可能にした、飛び道具としての刀」と称した。
炎の模様があしらわれた回転式連発拳銃と自動式連発拳銃からなる、一対の「刀」。連射性と速射性に加え高い命中精度を持っている。遠距離から攻撃が可能なため、半端な間合いは意味をなさない。「炎刀」とは「遠刀」と掛けて命名されたとも考えられる。
回転式は装弾数六発、自動式は装弾数十一発(ただしアニメ版では両方とも明らかに装弾数を超えた連続射撃を披露している)。

左右田 右衛門左衛門(そうだ えもんざえもん) ※真庭鳳凰
否定姫の腹心。尾張幕府直轄内部監察所総監督補佐。元忍者。「不及(およばず)」「不答(こたえず)」「不得禁(きんじえず)」「不外(はずれず)」など、会話の際には、相手の言動に対して「不」の付く否定形の言葉を放つ。
百七十年前、真庭忍軍に里を滅ぼされた「相生忍軍(あいおいにんぐん)」の最後の一人。上下とも時代にそぐわない洋装で靴を履き、否定姫の命令で顔の上半分は「不忍」と大きく縦書きした面で隠している。便宜上剣士を自称するが刀や剣術への執着はなく、大小二本の刀を腰に差しているがどちらも変体刀ではない普通の刀。真庭鳳凰は親友であったが、忍法と人格(および顔面の上半分)を奪われた関係でもある。

刀語 - Wikipedia より

毎月一冊のノルマがなければもう少しクオリティ上がったのでは?

毎月刊行を一年間やり遂げたのは確かに偉業なのだけれど、他の西尾維新作品に比べると、総合的な評価は少々下がるのが正直なところ。やはり致命的に時間が無かったのか。逆に毎月一冊のノルマさえなければ、もう少し内容の濃い作品に出来たような気がする。「戯言」シリーズのクオリティに比べると、どうしても物足りなく感じてしまう。

四季崎記紀が何をしたかったのか、あえて詳しく語らずというのは、まあ想像の余地を残すところがあってもいいとは思う。ただ、幕府側の偉い所が最終刊まで出てこなかったことも構成のミスだと思う。具体的な謎解きをしないのは西尾作品によくあることだけど、今回は読み手の消化不良が大きくて読後に得られるカタルシスも少なかった。

唯一の救いは主人公カップル二人の魅力だろうか。西尾作品にしては珍しく、本作はハーレム化しない。一夫一妻制を最初から最後まで守り通し、純愛路線を貫いた。お互いに精神的に大事などこかが欠けている。そんな二人がお互いを認め合い、人間として成長していく。しかし、互いの大切さを真に認識した時が、二人の訣別の時であったという展開は、ベタながらも泣けるよね。

刀語 第十二話 炎刀・銃 (エントウ・ジュウ) (講談社BOX)

刀語 第十二話 炎刀・銃 (エントウ・ジュウ) (講談社BOX)

 

最終巻はアニメ版でも楽しみたい

 見せ場の多い最終巻はやはりアニメで補完するのがおススメである。二人の別離のシーンから、全ての枷を取り払った七花の全力の戦いは圧巻(ほとんど瞬殺だが)。これまでとがめと二人で蒐集してきた変体刀を、情け容赦なく叩き折っていく展開は切ないながらも燃えるのであった。

刀語 第十二巻 / 炎刀・銃 【通常版】 [DVD]

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