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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

『後宮の烏5』白川紺子 寿雪に新たな試練、香薔の封印は解けるのか??

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※2022/05/06追記 最終巻『後宮の烏7』の感想を書きました。

シリーズ累計80万部突破!

2020年刊行作品。『後宮の烏』『後宮の烏2』『後宮の烏3』『後宮の烏4』に続く、『後宮の烏』シリーズの五作目にあたる。

後宮の烏5 (集英社オレンジ文庫)

前巻の感想でシリーズ累計50万部突破!と書いたが、第五巻の帯によると80万部を突破してしまったらしい。僅か8か月で30万部も増えてる!こうなると累計100万部も視野に入ってくるね。ここまで売れると、そろそろメディアミックス的な展開が出てくると思うのだけど、そろそろ動きがあるんじゃないだろうか。

集英社の特設サイトも更新されていて、書店宣伝物が限定公開されている。

店頭で配布中の号外風チラシが限定公開されていたのでリンクでご紹介。[PDF]

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

運命に立ち向かう少女の物語を読みたい方。中華系ファンタジーがお好きな方。なかなか進展しない恋模様を見守りたい方におススメ。

凄い売れてるみたいだけど、ホントに面白いの?という方はまずは第一巻からどうぞ!

あらすじ

毎夜、夢に現れる笑う女の怪異。呪詛のために命を落とした娘の真意とは。かつての烏妃が所持していたとされる首飾りの謎。そして、初代烏妃、香薔が仕掛けた結界を解くために、寿雪らは儀式に臨む。それは高峻との決別を意味するものであった。烏妃を欺こうとすると鼈(ごう)の神の企み。運命に立ち向かう寿雪に訪れた新たな試練とは?

ココからネタバレ

烏漣娘娘の呪縛から逃れられるのか

寿雪の中には、初代烏妃香薔(こうしょう)が封じた神、烏漣娘娘(うれんにゃんにゃん)の半身が宿っている。この呪いがある限り、烏妃は後宮から出ることが出来ない。呪いを解くためには三人の術者が必要で、寿雪、封一行(ほういちぎょう)、白雷(はくらい)がそれぞれ力を合わせる必要がある。封一行はともかくとして、敵対勢力である白雷の助力は得られるのか?というところまでが前回のあらすじ。

前王朝時代から数百年にわたって続いてきた烏漣娘娘の封印は果たして破ることが出来るのか?

では、今回も各エピソードごとにコメントしていきたい。

笑う女

飛燕(ひえん)宮の侍女、長勺松娘(ちょうしゃくしょうじょう)の夢に現れる赤い顔の女の因縁話。鶴妃晩霞(かくひばんか)と、燕夫人黄英(えんふじんこうえい)の懐妊が相次いで発覚。燕夫人はこれを機会に、鵲妃(じゃくひ)の位にランクアップ。鵲巣(じゃくそう)宮に移ることになる。

高峻(こうしゅん)が意外にやることはやっていてビックリ。しかも、外戚の勢力バランスまで読み込んだ、絶妙のタイミングでの同時懐妊という手際の良さである。君主の責務はしっかりと後継者を残すことだから、真面目に皇帝業に専念しているということなのかな。

妃たちの懐妊を知っても、意外に寿雪のメンタルには大きなダメージはなし?というか、寿雪の場合恋愛能が発達していないから、まだどす黒い嫉妬の感情が湧いてこないのか。

黒い塩

高峻は前王朝の遺臣、羊舌慈恵(ようぜつじけい)を宮中に取り立てることを決める。使者として出向いた令狐之季(れいこしき)は、慈恵から出仕の条件として、若くして死んだ娘、羊舌瑛(えい)に関する謎解きを託される。

羊舌氏は古くからこの国で塩作りに長けた一族で、杼王朝よりも前から宮中に出仕をしていた。寿雪の一族、欒(らん)王朝とも深いつながりがある。高峻は宮中で孤立している寿雪に対して、羊舌慈恵を後ろ盾として用意したかったのだろう。

高峻は、寿雪を後宮から出し、国外に亡命させるつもりでいる。寿雪に対して、誰よりも強い執着を持ちながらも、妃として娶ることは許されないと自らを律している高峻がストイック過ぎる。強烈な自我で国を乱した、前皇后の存在が反面教師になっている。皇帝なのだから何をしても許されるだろうに。読者の側としてはちょっともどかしくも思ったりする。

ちなみに、黒い塩こと、藻塩はこんな商品。ちょっと高いけど、普通の塩にはない風味があるので美味しいのだ。

藻塩 300g (笹川流れの塩、古代製塩)

烏妃の首飾り

寿雪よりも前に、香薔の結界を破ろうとした烏妃、序寧(じょねい)が居た。しかし後宮を出ようとした、その企ては成就せず、序寧は非業の死を遂げている。彼女が残した、序氏ゆかりの首飾りにまつわる因果の物語。

えー、歴代烏妃って136人もいるの!思っていたよりも遥かに多くてビックリ。そりゃ、歴代の怨念も溜まってそう。

寿雪の中に居る烏漣娘娘を解き放つには、香薔が残した結界を破らなくてはならない。というところで、過去に結界破りを企てた烏妃、序寧の悲劇が語られる。名前さえ知っていれば死者(五生)の魂を呼んで事情聴取が出来るのは便利だな。しかし、何故か序寧本人の招魂は出来ないのだと云う。果たして、序寧の身には何が起きていたのか。

霄(しょう)の国を出るべきだ。阿開(あけ)の国に行け。そう、寿雪に直接、語り掛ける高峻。罪人でもない自分が何故、国を出なくてはならないのか。「それは檻が変わっただけではないかと」激昂する寿雪と、珍しく苛立ちを露にする高峻。二人の関係性にようやく変化が出始めて、この先の展開が気になるところである。

破界

白雷の協力が得られることになり、香薔の封印を解くべく儀式が行われる。その背後には、烏を殺したい。欺きたいとする鼈の神のたくらみがあった。封印が解かれたとき、寿雪の身に起きた異常な事態とは。

儀式を前にして。寿雪と高峻が再び言葉を交わし。その想いを共有する。寿雪が救われるためにはこの国を出なくてはならない。それは、高峻との別離を意味している。理屈ではわかっていても、相互依存を深めて来たこの二人には受け入れがたい運命である。しかし、「そなたは私の半身なのだ」と告げる高峻に、寿雪のわだかまりが溶けていく。なかなか進展しない二人の関係が、少し先に進んだ瞬間だろうか。

そして終盤での急展開。いきなり劇的な局面になってきた。甦る歴代の烏妃たち。麗娘(れいじょう)はどうして、寿雪が封印を解くことを予期していたのだろう?前王朝の末裔とわかっていたから?杼の血をひく娘を巫にしたい。鼈の神に囚われてしまった、寿雪のこの先が気になる。

烏妃は何も望んではならぬ

「烏妃は何も望んではならぬ」。これは、先代烏妃である麗娘が再三、寿雪に語っていた言葉である。望みは苦しみを生み、苦しみは烏妃の中に眠る化け物を呼び覚ましてしまう。

しかし、寿雪は烏妃としての宿命に抗おうとする。香薔の封印は解かれたが、鼈の神による支配を寿雪は受けてしまったかのように見える。しかし、寿雪の中には、神である烏漣娘娘の半身が眠っているわけで、このままおとなしく鼈の神の意のままには動かないような気もする。

烏妃としての定めに逆らい、寿雪は多くの仲間を作ってきた。高峻。衛青。花娘(かじょう)、晩霞(ばんか)らの妃たち。そして、九九(ジウジウ)、温蛍、淡海といった従者たち。彼らの存在が最終的には寿雪を救うのではないかと思うのだけど、果たして次はどうなるか?染めていた髪の色が戻ってしまっているから、鼈の神の件が無かったとしても、もはやこのままでは居られないだろうしね。

後宮の烏5 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏5 (集英社オレンジ文庫)

  • 作者:白川紺子
  • 発売日: 2020/12/25
  • メディア: Kindle版
 

「後宮の烏」シリーズ既刊分の感想はこちらから!

第一巻『後宮の烏』の感想はこちらから。

第二巻『後宮の烏2』の感想はこちらから。

第三巻『後宮の烏3』の感想はこちらから。

第四巻『後宮の烏4』の感想はこちらから。

第六巻『後宮の烏6』の感想はこちら から。

最終巻『後宮の烏7』の感想はこちらから。