野尻抱介の代表作
2002年刊行。1999年~2000年にかけて「SFマガジン」に掲載された短編作品「太陽の簒奪者(さんだつしゃ)」「蒼白の黒体輻射」「失われた思索」をリライトした上で長編作品に改稿したもの。ハヤカワSFシリーズJコレクションからの登場であった。
短編作品「太陽の簒奪者」は2000年の星雲賞・日本短編部門を受賞。また長編作品としての本作も2003年の星雲賞・日本長編部門を受賞している。短編、長編両方で星雲賞を受賞!それだけ本作のコンセプトが優れているということなのだろう。これは凄い。
またベストSF2002の国内部門で第1位にランクインしている。
ハヤカワ文庫版は2005年に刊行されている。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★★(最大★5つ)
エスエフ作品、特にハードエスエフ系の作品が好きな方。宇宙を舞台とした壮大なスケールの物語を楽しみたい方。あらすじを読んで「これは面白そう!」と思った方。野尻抱介作品を読みたいけど、どれから読んでいいか悩んでいる方におススメ!
あらすじ
西暦2006年。太陽系第一惑星水星に異変が生じた。そこで発見された謎の建造物は次々と資材を射出。遂には太陽軌道を覆う直径8,000万キロもの巨大なリングを形成するに至った。日照量が激減した地球では天変地異が発生し人類は破滅の危機に陥る。事態を打開すべく、原子力宇宙戦艦ファランクスが就航する。乗員となった白石亜紀が水星で見たものとは。
ココからネタバレ
ハードエスエフを堪能しよう
ライトノベル畑での作品発表が多かった野尻抱介が、腰を据えてハードエスエフをとことん追求してみましたってのが本作である。元々『ロケットガール』シリーズにしても『ふわふわの泉』にしてもエスエフ的ガジェットはたっぷり内包されていただけに、ファンとしては嬉しい試みであっただろう(当時)。
魅力的な謎の提示とセンスオブワンダー、且つ科学的な解法。全編に溢れる宇宙への憧憬。各方面から高い評価を受けているのも納得。読み手に与える高揚感はなかなか得難いものがある。『太陽の簒奪者』が野尻抱介の代表作!と呼ばれるのも納得なのであった。面白い!
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