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『銀の檻を溶かして 薬屋探偵妖綺談』高里椎奈 第11回メフィスト賞受賞作

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高里椎奈のデビュー作

1999年刊行作品。第11回メフィスト賞受賞作である。高里椎奈(たかさとしいな)のデビュー作品にして「薬屋探偵」シリーズの第一作となる。

高里椎奈は1976年生まれ。「薬屋探偵」シリーズや、「フェンネル大陸」シリーズ、最近では「うちの執事が言うことには」シリーズと、デビュー以来20年に渡ってコンスタントに作品を世に送り出しており、メフィスト賞系作家の中でも成功している作家の一人と言えるだろう。

講談社文庫版は2005年に登場。キャラクター性の強い作品であっただけに、文庫版では登場人物たちのイラストを前面に押し出した表紙デザインになっている。

銀の檻を溶かして 薬屋探偵妖綺談 (講談社文庫)

2022年には久しぶりにシリーズ最新作(15作目かな)となる『翡翠の風と踊る死者 薬屋探偵妖綺談』が刊行された。息の長いシリーズ作品となっている。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

妖怪とミステリの組み合わせに興味のある方。魅力的な三人の男性キャラクターが活躍するミステリ作品を読んでみたい方。高里椎奈のデビュー作が気になる方。イラストを見てピン!と来た方におススメ。

あらすじ

とある街に不思議な店があるのだという。時代に取り残されたかのような古色蒼然とした外観を持つその店の名は「深山木薬店」。静かな佇まいの青年、白皙の美少年、赤毛の男の子の三人が営むこの店にはこの世ならぬ奇妙な出来事についての相談が寄せられる。この三人には実は決して人間には口外出来ない秘密があるのだが……

ここからネタバレ

妖怪×ミステリ

本作は妖怪が探偵にして主人公という一風変わったミステリ作品。捜査の際には妖怪ならではの能力が駆使されるが、事件の真相そのものには超自然的な力は及んでいない。あくまでも人間の世界の法則の中で事件は解決していく。

物静か系美青年。辛口天才美少年。弱々系保護欲かき立てられてしまう坊やと、ツボを抑えたキャラクター配置でキャラクター小説的なテイストが濃厚な作品。90年代の講談社X文庫のホワイトハートなんかを読んできた方には、しっくり来そうなテイストである。この分野でメフィスト賞に切り込んできたのは、マーケティング力高いな当時思った記憶がある。

自キャラへの強い愛

このシリーズは作者が長い間暖めていた作品であるらしく、作者による登場人物たちへの愛情をとても強く感じた。それ故に作者とキャラクター、そして読者との距離感の取り方に歪みが生じているように思えた。行間から濃厚に漂う「この子かわいいでしょ!」感が凄いのだ。自らが生み出したキャラクターへの愛情が溢れすぎて、オッサン読者としては引いてしまう。しかもこれまだシリーズの一巻目だし!

もっとも逆に考えるとこの部分が、本シリーズの魅力とも言えるので読み手を選ぶ作品だとは思う。実際人気があって、長期シリーズになっているわけだしね。

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