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『強救戦艦メデューシン』小川一水 絶望的な状況で孤軍奮闘するナースたちの物語

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ソノラマ文庫時代の小川一水作品

上巻が2002年、下巻が2003年に刊行。小川一水お得意の架空世界モノ。全六章構成で、各編だけを取ってみてもいちおう読める体裁になっている。

強救戦艦メデューシン(上) 強救戦艦メデューシン(下)

小川一水は近年の大活躍もあって、ゼロ年代に発表された旧作品の復刊活動が盛んである。ただ、何故か本作は未だ復刊を果たしておらず、ソノラマ文庫の消滅もあって現在は入手困難な状態が続いている。

あらすじ

フレナーダ民権国とココン協治国との戦いは十六年目に突入していた。当初優位に戦いを進めていたフレナーダであったが、広範な島嶼部に散らばるココン人たちのゲリラ戦術に手を焼き、いつしか戦線は停滞。厭戦ムードが高まる国内事情を打開すべく、フレナーダは艦隊病院団を新設するという奇策に打って出る。かくして就役した強救戦艦メデューシンとその乗組員たちは幾多もの困難に直面していく。

戦地で奮闘する看護師たちの物語 

国民の士気を鼓舞するため、なんて美名の元に建造された強救戦艦メデューシン。この空飛ぶ戦艦は医療部隊を満載していて、どんな最前線でもたちどころに訪れて、瞬く間に傷病兵を治してしまう。しかも載せているのは美人のナースばっかり。

とはいえ、当然そんなのは絵に描いた餅みたいな話で、実際の現場では極度の医師不足で、ヒロインたちナースの皆さんが見よう見まねで診察してオペまでこなさなくてはならないという酷い状態になっている。

ヒロインたちが有能すぎる!

最前線を転戦させられ、挙げ句の果てに友軍の弾よけにされてしまい、文句を言ったら更なる激戦地へ飛ばされちゃう。さすがに切れたヒロインたちが、この状況をなんとかしなきゃ!といろいろ頑張るお話。絶望的な状況で孤軍奮闘する頑張る女の子の物語としては程ほどの出来。ヒロインが優等生過ぎるところが個人的には頂けない。

装甲車を乗り回し、医師のまねごとをするばかりか、病原菌の研究特定、治療法の発見までこなしてしまうのはいくらなんでもスーパーウーマンに過ぎるんじゃないかと。まあ、格好の良さ優先ってことらしい。あとがきで作者も言い訳してるし。

明確な敵が最後までハッキリしないので、なんだかもやもやしたものを相手に孤軍奮闘している感じがもどかしくもあり、それで良かったような気もする。さすがに一国の政府相手に、年端もいかない女の子達が対等に戦っちゃうのは不自然だと判断したのかな。

強救戦艦メデューシン〈下〉 (ソノラマ文庫)

強救戦艦メデューシン〈上〉 (ソノラマ文庫)

 
強救戦艦メデューシン〈下〉 (ソノラマ文庫)

強救戦艦メデューシン〈下〉 (ソノラマ文庫)

  • 作者:小川 一水
  • 発売日: 2003/04/30
  • メディア: 文庫
 

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