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『感傷戦士』『漂泊戦士』森雅裕の五月香ロケーションシリーズとおススメ作品

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森雅裕が描く戦闘美少女モノ

森雅裕(もりまさひろ)は1953年生まれの作家。東京藝術大学の美術学部卒。

デビュー作は1985年の『画狂人ラプソディ』。この作品は第5回の横溝正史ミステリ大賞で佳作入選。続く、『モーツァルトは子守唄を歌わない』では、第31の回江戸川乱歩賞を受賞している。

ちなみに、この年、乱歩賞を取ったもう一人の作家が東野圭吾である。

本日ご紹介する「五月香(めいか)ロケーション」はPART1の「感傷戦士」が1986年、PART2の「漂泊戦士」が1987年に刊行されている。いずれも講談社ノベルスからの登場。

講談社文庫版は1990年に刊行されている。ノベルス版、文庫版いずれも、現在入手するのはAmazonのマーケットプレイス頼りになるかな。電子化もされていない。

五月香ロケーション〈PART1〉感傷戦士(センチメンタル・エニュオ) (講談社文庫) 五月香ロケーション〈PART2〉漂泊戦士(ワンダー・エニュオ) (講談社文庫)

あらすじ

自衛官梨羽一輝は演習の最中にひとりの少女に出逢った。飛騨忍軍の末裔の母親と、台湾の少数民族虎飛族の父親との間に生まれた彼女は超人的な身体能力を有していた。五月香(めいか)と名付けられ、梨羽の家族として引き取られた彼女だったが、十八歳を迎えたときに運命の日が訪れる。自衛隊内部での勢力争いに巻き込まれた五月香は過酷な戦いの世界へと身を投じていく。

ここからネタバレ

森雅裕はもう少し評価されてほしい

森雅裕は世渡りが下手な人で、片っ端から出版社と喧嘩しちゃうもんだから、どんどん本が出せなくなってしまったとてももったいない作家。これで売れる話が書ける人なら、どこでもやっていけるんだろうけど、どう見ても売れ筋から離れた通好みの話ばかり書いてしまうのが素敵なところ。

いくつかある森作品の系統の中で、本書は武闘派美少女系に属するお話。類書としては『流星刀の女たち』か『平成兜割り』あたり。

この人の書く武闘派ヒロインたちは半端でない超硬派なので、そんじょそこらの男とは恋に落ちない。メンタルにしても身体にしても、あまりに強すぎて、とりつくシマがないくらい隙がない。完全無欠過ぎるところが欠点と言えば欠点か。もう少し人間らしいところを見せて欲しかったなとも思うのだけど。

森雅裕作品はこんなのもおススメ

せっかくなので、もう少し森雅裕作品の話をしちゃう。個人的なイチオシは半自伝的な恋愛小説『歩くと星がこわれる』。文庫化されなかったので、ハードカバー版のみ。かなりレアな作品だけど、東京芸大の学生が主人公。1980年代を舞台とした恋愛小説としたは白眉の一作。

乱歩賞受賞作である『モーツァルトは子守唄を歌わない』は、ベートーヴェンと弟子のチェルニーが活躍する音楽ミステリ。魔夜峰央がカバーイラストを描いたことでも当時話題になった。

『ベートーヴェンな憂鬱症』はその続編。

『椿姫を見ませんか』『あした、カルメン通りで』『蝶々夫人に赤い靴』は声楽専攻の鮎村尋深と、日本画専攻の守泉音彦がコンビを組む、音楽✖美術ミステリシリーズ。クラシック音楽や、絵画の世界に興味のある方は楽しめるはず。