込み入ったアリバイ崩しに挑む
2000年刊行作品。東京創元社がかつて刊行していたミステリベスト本『本格ミステリこれがベストだ!』(そういえばあったよね)の2001年版では第2位にランクインした作品。
講談社文庫版は2003年に刊行されている。アマゾンの書影の解像度が低すぎる!電子化はされておらず、最近は新品での入手が困難な作品かもしれない。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
麻耶雄嵩作品ファンの方。木更津悠也が好き!という方。それからの烏有くんがどうなったのか気になっている方。本格ミステリ好き、自分で謎を解きたい方、特に超絶的に込み入ったアリバイ崩しに挑戦してみたい方におススメ。
あらすじ
高名な美術家である白樫宗尚の義理の娘、晃佳が殺害された。切断された首はピアノの鍵盤の上に、一方の胴体は焼却炉で焼かれていた。他者との交流を嫌い、奥地に引き籠もりる奇妙な一家。一人の幼子に収斂するという不思議な家系図を持つこの一族には数々の不審がつきまとう。またしても惨劇の場に居合わせた烏有は途方に暮れるのだが……。
ここからネタバレ
烏有くんのその後がわかる
摩耶雄嵩でベストを一作あげるとするならば『夏と冬の奏鳴曲』だと思っているわたしとしては烏有くんと桐璃のカップルのその後はずっと気に掛かかっていたところ。はからずも妊娠させてしまった桐璃との結婚が決まり、マリッジブルーに揺れる烏有くん。この覇気の無さというか茫洋とした不安感がわたし好みで実に良いのだ。わかるわかるよその気持ち。
と、いいながら実は事件には全然関係ない烏有くん。事件の発生現場にこそ居合わせたものの、結局本筋にはまったく絡むことなし。そんな烏有クンを置き去りにして事件は悲劇的な結末へとなだれ込む。相変わらず展開の読めなさと、発想の飛躍。一読しただけだと、何が何だか全くわからないところは、いかにも麻耶雄嵩作品といった感じ。
分刻みのスケジュールで生活する謎の家族。このアリバイ崩し(かなり凄い!)を真面目に考えて、あまつさえ解けてしまう読者ってのはかなり少数だと思うのだけど、やっぱり考えなきゃダメ?烏有くんのその後ばっかり気になって読み飛ばしていたわたしは本格ファンではないのかもしれない。