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『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』青柳碧人 昔話×ミステリの第三弾!!


累計部数30万部突破の人気シリーズに

2021年刊行作品。青柳碧人(あおやぎあいと)による『むかしむかしあるところに、死体がありました。』『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』に続く、昔話の世界を下敷きとした本格ミステリ短編集の第三弾である。ストーリー的な関係性はないので、シリーズのどの作品から読んでもオッケー。

双葉社の月刊小説誌「小説推理」に2020年~2021年にかけて掲載された作品をまとめたものである。

むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。 むかしむかしあるところに、死体がありました。

本作の帯によるとシリーズの累計部数が30万部を突破したとのこと。いつの間にか双葉社の専用サイトも出来ていた。

作者のインタビュー記事も発見!

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

前作『むかしむかしあるところに、死体がありました。』を読んでハマった方。昔話をもとにした本格ミステリ作品を読んでみたい方。有名な昔話の、ちょっと変わった解釈を楽しみたい方におススメ。

あらすじ

竹から生まれた不思議な女と、五人の求婚者をめぐる密室殺人の謎(竹取探偵物語)。転がるおむすびを追いかけた翁の不思議な体験(七回目のおむすびころりん)。一本のわらしべから大金持ちになった男の意外な真実(わらしべ多重殺人)。猿蟹合戦の物語に隠された謎(真相・猿蟹合戦)。なんにでも化けることが出来る狸が犯した罪とは(猿六とぶんぶく交換殺人)。

有名な昔話の「もうひとつの結末」

このシリーズは有名な昔話のストーリーを下敷きにして書かれている。今回使用されているエピソードは、かぐや姫(竹取物語)、おむすびころりん、わらしべ長者、猿蟹合戦、ぶんぶく茶釜の五編。

いずれもお馴染みの超有名作品ばかりだが、青柳碧人の手にかかると、思いもよらぬ結末まで連れていかれてしまうので驚く。前作に比べると、本作は有名な昔話の「もうひとつの結末」を強く意識して書かれているように思える。誰もが知っているあのお話も、角度を変えてみるとこんな解釈も出来る。そんな可能性の数々が、ミステリタッチで示されていくのが楽しい。

以下、簡単に各編ごとにコメント。

ここからネタバレ

竹取探偵物語

初出は「小説推理」2021年1月号。

竹取を生業としている堤重直(つつみしげなお)は、竹から生まれたかぐやを、友人の有坂泰比良(ありさかやすひら)と共に育てている。美しく成長したかぐやには、五人の求婚者が現れるのだが……。

密室殺人モノ。主人公の堤重直のハードボイルド調の語りで物語は進行する。かぐや姫が五人の求婚者に探索を命じた五つのアイテム(仏の御石の鉢、蓬萊の玉の枝、火鼠の皮衣、龍の首の玉、燕の子安貝)の属性を活かした、特殊設定ミステリとしても楽しめる。かぐや姫が「探偵」の概念を地上にもたらしたとするオチには笑った。

なお、本作は声優福山潤による朗読版が公開されている。

七回目のおむすびころりん

初出は「小説推理」2020年9月号。

隣人の米八(よねはち)が転げたおむすびを追いかけたことから大金持ちになる。欲の深い惣七(そうしち)は自分も財をなそうとおむすびを転がす。ネズミの巣穴に飛び込んだ惣七は、そこで不可解な殺人事件に巻き込まれる。

まさかのループもの。巣穴に飛び込んできたおむすび。そして殺害対象がネズミだからこそ成立するトリック。殺されたネズミ、万福の死をめぐり、やりたくもない探偵役を務める惣七の雑な推理が笑える。

わらしべ多重殺人

初出は「小説推理」2020年11月号。

ある時は行商人、ある時は山賊、そしてまたある時は金貸し。複数の立場を使い分ける謎の男八衛門が殺害される。八衛門の殺害について、三人の下手人が浮かび上がる。事件の背後には、わらしべから財をなした長者の影がちらつく。

多重殺人モノ。複数の場所で多重生活を送っていた八衛門が殺害される。八衛門は何故「三回も殺される」ことが出来たのか。死者を蘇生させるマジックアイテム剣健布(けんけんぷ)の特性が遺憾なく発揮された一編。元ネタのわらしべ長者との関連がやや弱いのが難点か。

真相・猿蟹合戦

初出は「小説推理」2021年3月号。

猿蟹合戦には知られざる真実が隠されていた。身代わりに狸の栃丸を殺させて、見事に生き延びた猿の南天丸。父の仇を討たんと、策略を巡らせる息子は、兄を兎に殺された茶太郎に相談を持ち掛けるのだが……。

叙述トリックモノ。お馴染みの、蟹、栗、鉢、牛の糞、臼のキャラクターには、それぞれ本来の姿があった!猿蟹合戦の別解釈とも言えるストーリー。南天丸が極悪非道過ぎる。このお話は、最終エピソードである「猿六とぶんぶく交換殺人」に続いていく。

猿六とぶんぶく交換殺人

初出は「小説推理」2021年5月号。

もどろ沼に浮かぶ小島で殺害された南天丸。犯人は密室状態の小島に、どうやって入り、どうやって立ち去ったのか。南天丸に恨みを持つ栃丸に容疑の目が向けられる。しかし栃丸には鉄壁のアリバイがあった。

交換殺人モノ。「真相・猿蟹合戦」とセットで読むべき作品。探偵役を務める猿六は、さるろく→サルロク→シャーロックということで、シャーロック・ホームズのパロディか?薬物(ムカデ草)中毒だしね。交換殺人を実行に移した、茶太郎と栃丸のその後が描かれる。短い作品だが、二段三段とどんでん返しが仕込まれており、最終エピソードにふさわしい一編といえる。

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