ネコショカ

小説以外の書籍感想はこちら!
『中高年男性の働き方の未来』
オジサンたちにこれから出来ることは何か?

『虫とりのうた』赤星香一郎 第41回メフィスト賞受賞作品


赤星香一郎のデビュー作

2009年刊行作品。作者の赤星香一郎(あかほしこういちろう)は1965年生まれ。本作『虫とりのうた』で、第41回のメフィスト賞を受賞。作家デビューを果たしている。

虫とりのうた (講談社ノベルス)

なお、本作は2022年現在、講談社ノベルス版のみで、文庫版は登場していない。

赤星香一郎の作品は以下の通り。いずれも講談社ノベルスからの刊行。

  • 『虫とりのうた』 (2009年)
  • 『赤い蟷螂』 (2010年)
  • 『幼虫旅館』(2011年)

その後10年ほどは新作が書かれていなかったが、2021年に入り、電子出版で以下の三作が上梓されている。作家としての活動は継続されているようだ。

  • アルゴリズムの鬼手(2021年)
  • 再起へのナインボール(2021年)
  • 楽しんでもらえる 楽しい小説執筆講座

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

ホラー要素の強い(というかほぼホラー)ミステリ作品がお好きな方。土俗的な、民俗学要素の強いミステリ作品を読んでみたい方。虫が出てきてもめげない方。虫に対しての耐性がある方。メフィスト賞系の作品を読んでみたい方におススメ。

あらすじ

会社を辞め、作家を目指し奮闘を続ける赤井雅彦。彼は、ある日、胡散臭げな中年男性に追われる少女に助けを求められる。父親だと名乗る男に、しぶしぶ少女を引き渡してしまった赤井だったが、その後彼女は殺害されてしまう。うしろめたさから、事件を調べ始めた赤井は、その背後に「虫とりのうた」と呼ばれる奇妙な童謡が存在することを知る。「虫とりのうた」にまつわる都市伝説の謎とは何なのか。

ここからネタバレ

童謡のとおりに殺されていく

主人公の赤井雅彦(あかいまさひこ)は小説家志望。会社員を辞めて日々執筆に励んでいるが、いっこうに目が出ない。家族は妻と六歳の息子がひとり。稼ぎの無い赤井に、妻、由貴子(ゆきこ)のプレッシャーは厳しい。

ある日偶然見知った少女が殺されてしまう。しかもその殺され方は、郷土の作家が作った童謡「虫とりのうた」の歌詞の内容を暗示したものだった。自分は少女を助けることが出来たのではないか?そんな罪悪感から、赤井は事件に深入りしていく。次から次へと事件の関係者が死んでいく。そしてその死に方のいずれもが「虫とりのうた」の歌詞の内容にそったものだった。

まずもって「虫とりのうた」の歌詞がかなりエグい。というかこの歌詞を考えた人のメンタルがちょっとおかしい。そもそも虫という存在そのものが苦手な方、嫌悪感を持ってしまう方も多いだろう。本作は読み手を選ぶ作品かもしれない。

ちなみに「虫とりのうた」の歌に登場する謎の呪文「かしでえんまなおえましん」について。これは、パッっと見でアナグラムなのかな?

かしでえんまなおえましん

おまえなんかしんでしまえ

と想像がつくけど、童謡に盛り込むようなテキストじゃないよな。やっぱりこの歌は狂気を孕んでいる。

なお、本作ではアナグラムについては他にもいくつか趣向が凝らされているようで、Amazonのレビューではなるほど!と驚かされた仕掛けがいくつか解明されていた。

家族が得体のしれない「なにか」になっていく恐怖

いちおうミステリ系の賞となっているメフィスト賞だが、その取り扱う範囲は広い。『虫とりのうた』はミステリな要素は形式的なものにとどまっている。本格推理的な成分は皆無で、どちらかというとホラーの領域に属する作品だろう。

N県の旧家、黒沼家出身の由貴子には秘密がある。彼女の曽祖父は地元では有名な宗教団体の教祖で強い霊能力を持ち、数々の預言を残したとされる。現在の黒沼家では、祖母のすずが絶対的な権力を握り、不気味な存在感を放つ。

由貴子と、息子の真樹男(まきお)には、曽祖父譲りの特殊な力が備わっているのではないか。物語が進展するにつれて、主人公の疑心暗鬼の想いは深まっていく。いちばん身近な存在であるはずの家族が、次第に得体のしれない怪異に変貌していく。もっとも安心できる場所であるはずの家庭が、身の毛もよだつ恐怖の場所に変わってしまう。これは怖い。

解明されていない秘密とは何だったのか?

本作の表紙見返し部分にはこんなテキストが書かれている。

この小説には、作中で解明されていない秘密が隠されています。
その秘密に気づいたあなたは、なぜ事件が起こったのか、
本当の理由を知ることが出来るでしょう。

恥ずかしながらこれが全然わからなかった。シンクロニシティと元型の話ってけっきょく何だったのか?由貴子が頻繁に外出していたのは何故なのか?由貴子はどうして、あれだけの仕打ちを受けながら主人公と結婚したのか?それとも巨人の話か?はたまた、真樹男が何度もパパと呼んでくるところ?

軽くググってみたが、明確にこれだと解き明かせた人はいないような……。解かれない謎、というか、謎として認識してもらえない謎というのも残念な話なので、もう少しヒントなりが欲しかったところ。

本作前後のメフィスト賞受賞作の感想はこちらから