ネコショカ

夜20時更新。雑食系の書評Blogです。
採用されると原稿料が貰える!
ブックレコメンドへの寄稿始めました

『ピニェルの振り子 銀河博物誌1』野尻抱介 19世紀の人類が宇宙旅行を可能にしたら?


魅力的な設定のエスエフ作品

2000年刊行作品。作者の野尻抱介(のじりほうすけ)は1961年生まれ。

1992年に「クレギオン」シリーズでデビューして以来、長らく富士見系の作家であった野尻抱介が初めてソノラマ文庫に書き下ろした作品が本作である。早川書房のベストSF2000国内部門第6位にランクインしている。

ピニャルの振り子

あらすじ

惑星ピニェルの少年、採集人スタンは交易船との取引のため街へ出る。親方に託された希少なペラム蝶を売りつけることには成功するが、そこで出会った交易船イクエーター号の画工モニカに一目惚れしてしまう。あえて禁を犯し密航の暴挙に出たスタン。が、たちまち事態が発覚。密航者には例外なしの船外放棄の刑が待ちうけているのだが……。

19世紀に宇宙旅行!?

19世紀世界の人類が突然宇宙旅行を可能にしてしまったら。ただしその技術のキモは完全にオーバーテクノロジー。蒸気機関と超科学を併用しながら、旺盛な好奇心のまま宇宙へと乗り出していく探検家たち。交易船のパトロンは放蕩貴族だし、船は水夫たちが肉体労働で動かしているし、カメラすら満足に流通していないから画工のヒロインが大活躍するし。うーん、これはなんともワクワクする設定だ。

ボーイミーツガールものではあるけれど

感情の露出が極端に少ない変わり者のヒロインと、とにかく元気だけが取り柄の猪突猛進型主人公のボーイミーツガールストーリーは野尻抱介がそもそも恋愛小説体質でないのか、終始まったりムードで盛り上がらない。まあ、どちらかというとこの作品の場合、キャラクターたちの存在は刺身のツマで、真に描きたかったのは惑星ピニェルとその「振り子」であったのだろうから、バランスの取り方としては間違っていないか。

続篇は出ないのか!!

尚、この作品には「銀河博物誌」とシリーズ名が付けられており、しかも表紙を見ると「1」とナンバリングまで振ってある。いかにも続編が出ていそうな作品なのだが、刊行から20年、非常に残念ながら未だ続巻は出ていない。レーベルとしてのソノラマ文庫が事実上なくなってしまったから?

「ロケットガール」シリーズもいつの間にか早川から復刊していたくらいなのだから、「銀河博物誌」も復刊してもいいのでは>>早川書房さま。ついでに、続篇が出てもいいと思うのだが、作者的に執筆意欲がもうないのかなあ。魅力的な世界観だけに、これで終わりなのはホントにもったいない。

ピニェルの振り子―銀河博物誌〈1〉 (ソノラマ文庫)

ピニェルの振り子―銀河博物誌〈1〉 (ソノラマ文庫)

  • 作者:野尻 抱介
  • 出版社/メーカー: 朝日ソノラマ
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 文庫
 

その他の野尻抱介作品の感想はこちらからどうぞ

www.nununi.site